『
天使の涙』の続編にあたるこの作品。思えば『天使の涙』が、私が初めて読んだ村山さんの作品でした。(デビュー作だから当たり前といえば当たり前ですが…。)読んだのはもうだいぶ昔ですが、当時、このタイトルに惹かれて読んで、想像していたのとあまりにかけ離れたラストに驚愕した記憶があります。そしてこの本は封印しました。悲しくて悲しくて、嫌いだったんです。
(後に妹が勝手にそれを持ち出して読んで「なんでこんな悲しい本読ませたの!」と私にくってかかるという事件もありました。「こんなんじゃ感想文(←夏休みの宿題)書けない!ひどい!」って。私のせいじゃないよぉ〜。)
これは『天使の涙』から十年後の物語です。あの話、ラストはあまりに衝撃的だったので克明に覚えているのですが、細かい内容とか登場人物の名前とかがまったく思い出せなくて、これを読む前に一度読み返そうかなぁと思ったのですが、あまりにあの頃の記憶が痛いので止めました。そのくらい、ショックだったんです。当時の私には…。そんな状態で読み始めましたが、読んでいくうちにちゃんと解説されていったので大丈夫でした。思い出しました。
主人公は大学生の男の子、慎一。彼が高校時代の担任教師だった夏姫と出会うところからこの物語は始まります。春妃と歩太と夏姫。十年前、彼ら三人に起こった出来事などまったく知らない慎一は、夏姫と付き合うようになっても彼女の心を支配している「何か」が気になって仕方がなく…というストーリーです。
実はこの慎一くんがいまいち好きになれず(一回寝たらいきなりタメ口になるようなところがちょっと…)、正直、あの頃のような衝撃はありませんでしたが、それでも「取り返しのつかない」こと、その後悔と痛みがすごく伝わってきて、つらかったです。そして、彼をいまいち好きになれないのは、彼の若さが鼻についてしまうからで、それはすなわち私が歳を取ったということで、この物語の「うまくいきすぎ」るところが気になっちゃうのも同じ理由で、それがわかっているだけにちょっと悲しかったりもしました…。
私はまだ、誰かを、大切な誰かを、目の前で突然断ち切られるように失った経験はありません。そんなことになったとき、後悔しないでいられるかな。そんなことをすごく考えさせられる物語でした。孝行したいときに親は…。
この物語がこういうふうに終わるのは最初からわかっていたし、予定調和と言ってしまえばそれまでですけど、でも村山さんがこの続編を書いてくれてよかったです。私は救われました。後に待っているのなら、封印をといてもう一度『天使の卵』を読み返してみてもいいなと思いました。