プロフィール
chiekoa

呑まない日はあっても読まない日はない。というわけで、その日に読んだ本をできるだけ記録してみようという試みで始めました。コメントなど書いていただけるととてもよろこびます!
カレンダー
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< December 2018 >>
カテゴリー(作家さん別)
過去の読書日記
このサイト内を検索
OTHERS
  管理者ページ
  RSS1.0
  Atom0.3
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - | - |
ランチブッフェ [山田宗樹]
4093797390ランチブッフェ
山田 宗樹
小学館 2006-06

ポストに届いた10年前の自分と当時の恋人からの手紙に書かれていたことは…(「二通の手紙」)。社運をかけて開発した農薬に薬害が発生?!(「混入」)。短編集です。

山田さんといえば『嫌われ松子の一生』そして『天使の代理人』…のイメージでいた私は、この本もかわいい顔してえらいこっちゃな本かもしれぬ…と思ってびくびくしながら読んだのですが、いやはやどうして、全然傾向の違う本でした。ほっ…。

「二通の手紙」「混入」「ランチブッフェ」「電脳蜃気楼」「やくそく」「山の子」という短編がそれぞれ収録されているのですが、とくにコレ!という決まったテーマがある風でもなく、恋愛モノあり、コミックものあり、ブラックユーモアあり、ちょっとホラーチック(違ったけど)なものあり…と、ずいぶんいろんな味の物語たちでした。ひやりとするのも、にこにこしちゃうのも、のんびりできるのもあって、遊園地みたいでした。さらりと読めて、休日にのんびり読んだりするのにぴったりの本でした。
| や行(山田宗樹) | comments(0) | trackbacks(1) |
嫌われ松子の一生 [山田宗樹]
4344002857嫌われ松子の一生
山田 宗樹
幻冬舎 2003-01

三十年以上前に失踪し、最近になって殺された松子という女性。殺されるまでその存在すら知らなかった松子の生涯を、甥である大学生・川尻笙は興味本位から調べ始めます。そこで明らかになった彼女の凄まじい人生とは…。

読み終わって、すごく複雑な気持ちになりました。

松子の気持ちが、わかるようなわからないような。松子に、同情したいようなしたくないような。なんでこんなことになっちゃったのか、理解できるようなできないような。わかる気もする…ような気がするんだけど、でもなんで!という気持ちがずっと残ってて、読みながら「バカ!」ってずっと思ってて、もどかしくて悔しくて、私自身が松子を好きなのか嫌いなのかわかりません。

容姿もよくて、頭もよくて、真面目でがんばりやだった松子。悪意があったわけでも、すごく悪いことをしたわけでもなんでもなかった松子。それでもこんなささいなきっかけで、こんなにも簡単に、人は坂を転げ落ちるように落ちていってしまうのだということが、そしてそれは誰にも起こりうるのだということが、すごくすごく、ぞっとするほど怖かったです。

何かがうまくいかなくて、どうしてもうまくいかなくて、どうしようもなくて。松子もきっと「どうして?」ってずっと思っていて。松子が悪いわけではないけれど、でも、彼女のせいじゃないわけでもない。でも松子に「あんたがもっとがんばればこんなことにならなかったのに!」なんて言えない。言いたいけど言えない。そういうことがすごく心の中でグルグル渦を巻きました。

こんなに後味が悪いのに、でも読んでよかったと思える本もなかなかないと思います…。
| や行(山田宗樹) | comments(7) | trackbacks(14) |
天使の代理人 [山田宗樹]
4344006194天使の代理人
山田 宗樹
幻冬舎 2004-05

  「Yに いつか君が読んでくれることを願って」

そんな言葉が添えられたこの本のテーマは「妊娠中絶」です。暗いテーマです。重いテーマです。でも、逃げてはいけない、大切なテーマです。

そしてこの本は、中絶はいいとか悪いとか、そういうことを書いているのではありません。結論を出しているのではありません。小説という形をとって、様々な立場の人の思いや考え方、そして日本の現状を、私たちに示してくれています。ただ、示すだけです。何を肯定しているのでも否定しているのでもありません。どちらにも拠らず、結論に突っ走らないで、こういう書き方ができるなんて、すごい!と私は思いました。

望まれない命はありますか?
子供の命は誰のものですか?
中絶は殺人ではないですか?
登場人物たちは自分に、そして中絶をしようとする女性にこう問いかけ続けます。そして同時にその問いは、読んでいる私にも常にささやかれています。「あなたはどう思いますか?あなたならどうしますか?」と。

この物語の中には様々な女性が登場します。過去に自分の意思で中絶をした者、医療ミスで望んでいない中絶をさせられてしまった者、そしてこれから中絶をしようとする者。誰もが苦しんで苦しんで、悩んで悩んで悩んで、それでも自分なりに出した答えの中で精一杯生きています。私は妊娠も中絶もしたことないですが、読んでいて何度も涙が出そうになりました。

助産婦として何度も中絶手術に手を染め、その罪悪感から「一人でも多くの赤ちゃんを救おう」と実際に行動を起こした女性、桐山冬子の生き様には、ほんとうに心打たれました。自分を正当化することは決してせず、重い過去を背負いながらも、それを捨てるのではなく、ごまかすのでなく、その重さごと生きようとする姿には、ほんとうに頭が下がりました。

このお話は、うまくまとまりすぎているかもしれません。都合よく物事がはこびすぎているかもしれません。でも、そういう小説としての作りがどうこうではなくて(私は小説としても大変に好きですが…)、本の終わりに掲載されている「参考文献」の数を見たら、山田さんがどれだけ本気でこのテーマに取り組んだかがきっとわかると思います。私は、読んでよかったです。山田さんのこのメッセージを受け取ることができて、よかったです。私も逃げずに考えたい。そう思いました。
| や行(山田宗樹) | comments(2) | trackbacks(3) |