30年に一度起こる町の「消滅」。忽然と「失われる」住民たち。喪失を抱えて「日常」を生きる残された人々の悲しみ、そして願いとは。大切な誰かを失った者。帰るべき場所を失った者。「消滅」によって人生を狂わされた人々が、運命に導かれるように「失われた町」月ケ瀬に集う。消滅を食い止めることはできるのか?悲しみを乗り越えることはできるのか?
※えーと、この本をすでに読まれた方だけ読んでくださいね、という感想です。
…全ての本が読者にわかりやすくなければならないとは、毛ほども思っていないのですが…この本は難しかったぁ〜!というか、設定を飲み込むのにやたら時間がかかりました。いや、読み終えてなお飲み込めていないのかも…。読み進めていけばわかるのかと思ってたら、むしろどんどんわからなくなってゆく…。正直途中で投げ出しそうになりました。SFっていうんでしょうか、こういうの(定義はよく分からずに言っておりますが)。読みなれてないからですかねぇ。
そもそも、このメインになってる「消滅」ってヤツが、ものすごく複雑なうえに科学的なんだか非科学的なんだか、きっちりしてるんだかしてないんだか、「なに?意志があるものなわけ?なんなの?なんなの?オカルトなの?(パニック)」みたいな感じで、それもよくわからないでいたところに、さらに「居留地」やら「分離」やら「古楽器」やらっていう意味不明な世界も出てきたりしちゃって、へんなクスリとかまで出てくるし、盛りだくさんすぎて…いったいどういうスタンスで読んだらいいのか…、混乱を極めました。
もっと掘り下げて分厚くするか、もっとしぼって薄くするか、どっちがにしたほうがよかったのでないかしら?(なんてえらそうに言ってみたりして)。
現実では「ありえない」設定の世界の物語なのに、「この本の中の世界の現在」が「現実」にものすごく近いから余計に混乱するんです。ヘンな世界なの、そうじゃないの、どっちなの!ってな感じで。『
となり町戦争』のときにはそれがなんともいえない恐い雰囲気をかもし出しててよかったと思うんですが、この本の場合は…うーん。普通に見えて急に「電力調整日」とか「防空演習」とかあるし。戦時中?誰相手の?なんで?そんな説明あった?(読み飛ばした?)(←ありうる…)。
なお他に細かく気になってしまったことを言うと、「佳子」がメインの章なんですけどね、地の文でいきなり「佳子さん」って…、どうして「さん」付け??普通「佳子」でしょう。なんかすごく違和感があって読みづらかった…。何か意図的なんでしょうけど、意図がわかんなかったので(泣)。
と、なんか否定的なことばかり書いてきたことに気づきましたが、これは間違いなく「力作」なんだろうし、シンプルに「町 VS それに抵抗する人々」の物語として読めれば、それなりに感動できます。いろんな思いを乗り越えて、一つの目標に向かって邁進する人々それぞれの姿。でもなかなかそこに入り込めなった自分の無力さが…受け手の皿の問題が…もったいなかったかなぁ。
あ、あと表紙というか本の作りのアイディアがナイス、と思いました。うまいっ!