図書館で、「あ、コニー・ウィリスの新刊だ!」と思って手にとったところ、こんな表紙がお出迎え。びっくり&びびってしまい、こっそり本棚に返そうとしたところ、このワンコが「まさかオレ様の本を読まねぇってことはないよな?!ああん?!」とおっしゃり、ひー!と思って裏返したら裏表紙のワンコがまた「この世界一ラブリーなオレ様の本だぜ?きゃわん!」とおっしゃったので、読むことにしました。
…って冗談ですけど、松尾たいこさんですけど、いい意味で、すごいです。
気を取り直して、えーと、コニー・ウィリスの短編集です。収録されているのは「女王様でも」「タイムアウト」「スパイス・ポグロム」「最後のウィネベーゴ」の4作品です。
「女王様でも」
娘が「サイクリスト」になると言い出した。それについてどうしても一言ある親族が繰り広げるどたばたは…。
これは最初読み始めたとき、いったい何のことなのやら「???」だったのですが、それがわかったところで「!!!」となりました。うまい〜!!私が感じたのと同じ読んでびっくりを味わってほしいので、ネタバレはしませんが、さすがだなぁ、と。
「タイムアウト」
タイムトラベルの新理論、「現在子」の研究に協力することになったルジェーン。この計画の正体は?集められた人々はいったい…?
あとがきで大森さんが書いていらっしゃる「最大の特徴は、一見まったくSFとは思えないその書きっぷり。なにしろ小説の九十五パーセントは主婦のよろめきドラマと区別がつかないのである。」に深く納得。しかし、実はオチがよくわからなかったわたしです。えーと…で、えー…んが?どうも「時間モノ」は私の脳みそではついてゆけないらしい…。最後のセリフとかも、きっと効いてるんだと思うんですけど、よくわからず。そんな自分がにくい。
「スパイス・ポグロム」
「スペースプログラム」を巡って、エイリアンたちと交渉中の地球。婚約者からエイリアンを自宅で世話するように頼まれたクリスは…。
これスキです!こういうのスキです!ロマンチックなドタバタ劇。やたらと「日本」な小道具や名前が出てくるのは、もともとがそうなのでしょうか?大森さんのサービス?いや、さすがにそれはないか…。スピルバーグさん、これを映像化してくれないでしょうか(笑)。
「最後のウィネベーゴ」
取材先に車で向かう途中、道端でひき逃げされた動物の死体を発見したマコーム。このとき彼がとった行動がやがて…。
舞台はまた大森さんの言葉をお借りすると「終末に向かってゆっくりと坂を下りはじめている(いまの現実と地続きの)世界」。読み始めた最初の頃は、何が「いま」と違うのかわからないくらい、現実に近い、でも何かが違う世界で、読み進めて行くうちに、それがなんだかわかってくる、その過程すら見事でした。こういう「なんだかわからない違和感」が邪魔をして物語に没頭できない作品も多いのですが、これは違いました。そしてこの物語は…私は泣きました。356ページの、まさにそのセリフで。名作です。読み終わってから、もう一度表紙を見たら、彼らが私に語りかけてくることは、最初と全然違いました。誤解してて、ごめんね…。
というわけで、4編、それぞれが全く違うタイプで、でもそれぞれに傑作でした。私はもちろんコニー・ウィリスといえば「めちゃめちゃ長い小説ばっかり書いてる人」だと思いこんでいたクチなので、そういう意味でも新鮮でした。長かろうが、短かろうが、中くらいだろうが、すばらしいものはすばらしいのでした。
ちなみにこれは河出書房新社から出ている「
奇想コレクション」の一冊ですが、このシリーズ、全部表紙が松尾さんです。いいなぁ。