列強諸国に蹂躙され荒廃した清朝最末期の北京。その混乱のさなか、紫禁城の奥深くでひとりの妃が無残に命を奪われた。皇帝の寵愛を一身に受けた美しい妃は、何故、誰に殺されたのか?犯人探しに乗り出した日英独露の高官が知った、あまりにも切ない真相とは―。
『
蒼穹の昴』にあまりにもはまったので、そのままこちら『珍妃の井戸』に突入してしまいました。時期的には『
蒼穹の昴』のラストから二年後、義和団の乱(なんか歴史でやった気がするんだけど、まったく覚えておらず不覚)のさらに後のお話です。
『
蒼穹の昴』に出てきた登場人物たちの、その後がわかる、という点で番外編的な役割も負っているのかなと思います。とはいえ、トーンが全然違うというか、ああいう壮大な歴史と人間のドラマ!という感じではなく、ちょっと推理小説っぽい、軽い読み物っぽい感じになっています(と私は思いました)。
今回の主役は『
蒼穹の昴』の当事者たちでなく、あの物語にとっては第三者である四人の貴族たち。事件の真相を追う彼らが、関係者たちに話を聞くという、インタビュー形式で物語が進んでいきます。その話を聞かれるのが、トーマス・バートンであり、蘭琴であり、袁世凱であり、珍妃の姉であり、そのおつきの宦官であり…。でも各自の証言する内容が全部が全部バラバラなのです。いったい真相は何だったのか?!誰が嘘をついていて、誰が本当のことを言っているのか?読み進めるにつれ、もうどんどんわからなくなります。しかしあまりにもみんな正々堂々と大きな声で嘘を付きすぎる…いけしゃぁしゃぁってこんな感じ?四人の貴族もごくろうなことだわ…という心境に。
「その後」を知ることができてうれしかったですけど、でもこの結末は…切ないですね。真相がどうだったのか、それはわかりません。そういう意味で、やっぱりこれはただの「推理小説」ではないんだろうなと思います。ただひたすら…切ないです。人の、国の、世界の思い、悲しみ。いろんなことがぐわっと浮かんできて、切ないです。
ちなみに、以下、自分のための参考資料。実在の人物たちの紹介へのリンクです。
ああ、ホントに実在していたんだなぁと、しみじみ…。
西太后 /
光緒帝 /
李鴻章 /
袁世凱 /
康有為 /
恭親王 /
なお、『蒼穹の昴』を読み始めたときは、人の名前の読み方が日本語読みでなく中国語読みなことにとまどい、最後まで大丈夫か?!と心配になっていた私ですが、今となっては逆に日本語読みに違和感を感じるという…。「せいたいこう」じゃなくて「シータイホウ」じゃなくちゃいや!…そんな自分にちょっととまどったくらいのものです。はまってますね。そんな自分がうれしかったりします。リッパに育ちました(?!)。
『蒼穹の昴』(文庫版全四巻)感想
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蒼穹の昴(1)
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蒼穹の昴(2)
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蒼穹の昴(3)
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蒼穹の昴(4)