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呑まない日はあっても読まない日はない。というわけで、その日に読んだ本をできるだけ記録してみようという試みで始めました。コメントなど書いていただけるととてもよろこびます!
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闇の守り人 [上橋菜穂子]
4035402109闇の守り人
上橋 菜穂子 二木 真希子
偕成社 1999-01

思うところがあって、久しぶりに生まれ故郷のカンバル王国に戻った女用心棒のバルサ。それまで暮らしていた新ヨゴ皇国からカンバル王国につづく真っ暗な洞窟の中で、彼女が出会ったものは…。

精霊の守り人』に続く、守り人シリーズ第二弾です。前作とは違うまったく新しい舞台、そして登場人物。それでも相変わらずここで語られる世界は見事です。ただ一作目の世界を膨らませただけじゃなくて、ほんとうにまったく新しい世界。そこで人はまさに「生きて」います。そんなふうなので、シリーズの二作目ですが、これだけ単品で読んでも十分に楽しめる一冊になっています。すごいです。

今回の舞台はカンバル王国。忘れようとしてきた古傷「故郷」と正面から向かい合おうと思って戻ってきたバルサですが、その途中でヒョイル(闇の守り人)に襲われていたカッサたち兄妹を助けたことをきっかけに、思わぬ陰謀に巻き込まれて行きます。そしてその陰謀にまつわる話の中で、ジグロがその故郷でどんな汚名を着せられていたのかもバルサは知ることになります。圧倒的な権力を握る相手から、バルサはこの国を守ることができるのか。そしてジグロの汚名をそぐことができるのか。

私はここまで読んで大変偉そうにも「あ、この先のストーリーは読めたな」と思ったのですが、全然違いました。ほんとうにすいませんでした。私なんかの想像をはるかに超えたところに、この物語は広がっていました。物語も、そして人々の思いも、そんな私が安易に想像したものなんかより、もっともっと、ずっとずっと広く深いものでした。人間が、生きていく上で起こる、どうしても避けられない様々な出来事。それを背負って生きる人々の、その痛みが、声にならない心の叫びが、聞こえてくるような気がしました。読んでいて胸が締め付けられました。

そしてこの物語は、バルサの物語でもあり、カッサの物語でもあります。あらかじめ決められた人生、ただあきらめて与えられたものをそのままに生きていくだけの人生。そんなんじゃなくて、自分の力で人生は切り開いていくことができるのだということ。少し見方を変えれば、素晴らしい世界が自分の目の前には広がっているのだということ。そんなことに気づくカッサの成長物語としても、すごく清々しい物語でした。

この物語の事件が終わっても、バルサの人生はこれから先も続いて行きます。彼女の背負った荷物がなくなったわけではなく、それはきっと一生変わりません。それでも、どうか、どうか少しでもその荷物が軽くなりますように、闇の中に一筋でも光を見つけることができますようにと、祈って止みません。強い強いバルサ。「運命」なんて言葉を蹴っ飛ばして歩いていく、こんなにかっこいい彼女に対して、こんな心配をするのもおかしな話なのかもしれませんが…。

「闇」は人の心の中にあります。人は、それと共に生きなければいけません。そこから逃げることはできません。そして、それと向き合うことができるのは、自分だけ。乗り越えることができるのも、自分だけ。誰かを恨んでも、怒りを覚えても、でも、いつかそこを突き抜けた向こう側へ―。そんなことを思う一冊でした。
| あ行(上橋菜穂子) | comments(4) | trackbacks(2) |
精霊の守り人 [上橋菜穂子]
4101302723精霊の守り人
上橋 菜穂子
新潮社 2007-03

女ながら腕ききの用心棒であるバルサ。ふとした偶然から新ヨゴ皇国の皇子チャグムの命を救った彼女は、それをきっかけにチャグムの母・二ノ妃から「チャグムを連れて逃げ、彼を守って欲しい」という依頼をされてしまう。チャグムの体には何かが宿っており、そのせいで父である帝から命を狙われているのだというのだ。断ることなどできず、彼を守り逃げることになったバルサ。チャグムの体に宿ったモノとは何なのか?そして二人の運命は…。

ずっと読みたいなぁと思っていたこの「守り人シリーズ」、一作目にあたるこの作品が文庫化されたのを機に、購入して読んでみました。

数百年の歴史を持つ「新ヨゴ皇国」。その建国にまつわる伝説に端を発して、この物語は広がっていきます。人間の住む世界「サグ」と、そして精霊の住む世界「ナユグ」。支えあう二つの世界の間で、長い年月の間に、いつの間にか忘れ去られた、いや、忘れさせられたもの。

読み進めるにつれて、どんどんこの世界にはまりこんでいく自分を感じました。そう、「世界」。ここにはほんとうに新しい「世界」があります。ただ本を読むだけで、その世界が目の前にぐんぐん広がります。そしてこの「世界」は決して単純なファンタジーなどではなく、私たちの生きているこの「世界」の姿を、鏡のように映すものでもあります。こんなに素晴らしい本をなぜ読んでいなかったのか…児童書だから?いやはやもう、不覚です。不覚でした。

チャグムの体に宿ったもの―ニュンガ・ロ・イム(水の守り手)とはいったい何なのか?、伝説の本当の意味とは?、チャグムを狙う父の追っ手と、その体に憑いたモノを狙う幻獣と、二つの死の手からバルサはチャグムを守ることができるのか?

次から次へ、息つく間もなく繰り広げられるストーリーは、文句無く面白く、読み手を引きつけて止みません。手に汗握りながら読みました。そして出てくる登場人物たちのキャラがもうみなとても魅力的。全然薄っぺらくなくて、それぞれがそれぞれに生き生きとしていて、いや、もう生き生きとかそんなことじゃなくて、まさに「生きて」いて。そこにある深い思いが…なんかそれだけでもう参りました!と思いました。

文庫化されているのはまだこの一冊だけですけど、単行本としてすでにシリーズが完結しています。これからぜひ読もうと思います。絶対読みます。

「守り人シリーズ」リスト
・精霊の守り人
・闇の守り人
・夢の守り人
・虚空の旅人(外伝)
・神の守り人 来訪編
・神の守り人 帰還編
・蒼路の旅人
・天と地の守り人 第一部 ロタ王国編
・天と地の守り人 第二部 カンバル王国編
・天と地の守り人 第三部 新ヨゴ皇国編

ところでバルサは三十歳。「おばさん」とか「中年」とか書かれてるんですけど…え?そうなの?三十歳ってそうなの?(涙)。…まぁこんなにかっこよくて大活躍だからいっか…。(じゃぁこんなにかっこよくもなく活躍もしない私は…?きゃー!)
| あ行(上橋菜穂子) | comments(4) | trackbacks(4) |