女ながら腕ききの用心棒であるバルサ。ふとした偶然から新ヨゴ皇国の皇子チャグムの命を救った彼女は、それをきっかけにチャグムの母・二ノ妃から「チャグムを連れて逃げ、彼を守って欲しい」という依頼をされてしまう。チャグムの体には何かが宿っており、そのせいで父である帝から命を狙われているのだというのだ。断ることなどできず、彼を守り逃げることになったバルサ。チャグムの体に宿ったモノとは何なのか?そして二人の運命は…。
ずっと読みたいなぁと思っていたこの「守り人シリーズ」、一作目にあたるこの作品が文庫化されたのを機に、購入して読んでみました。
数百年の歴史を持つ「新ヨゴ皇国」。その建国にまつわる伝説に端を発して、この物語は広がっていきます。人間の住む世界「サグ」と、そして精霊の住む世界「ナユグ」。支えあう二つの世界の間で、長い年月の間に、いつの間にか忘れ去られた、いや、忘れさせられたもの。
読み進めるにつれて、どんどんこの世界にはまりこんでいく自分を感じました。そう、「世界」。ここにはほんとうに新しい「世界」があります。ただ本を読むだけで、その世界が目の前にぐんぐん広がります。そしてこの「世界」は決して単純なファンタジーなどではなく、私たちの生きているこの「世界」の姿を、鏡のように映すものでもあります。こんなに素晴らしい本をなぜ読んでいなかったのか…児童書だから?いやはやもう、不覚です。不覚でした。
チャグムの体に宿ったもの―ニュンガ・ロ・イム(水の守り手)とはいったい何なのか?、伝説の本当の意味とは?、チャグムを狙う父の追っ手と、その体に憑いたモノを狙う幻獣と、二つの死の手からバルサはチャグムを守ることができるのか?
次から次へ、息つく間もなく繰り広げられるストーリーは、文句無く面白く、読み手を引きつけて止みません。手に汗握りながら読みました。そして出てくる登場人物たちのキャラがもうみなとても魅力的。全然薄っぺらくなくて、それぞれがそれぞれに生き生きとしていて、いや、もう生き生きとかそんなことじゃなくて、まさに「生きて」いて。そこにある深い思いが…なんかそれだけでもう参りました!と思いました。
文庫化されているのはまだこの一冊だけですけど、単行本としてすでにシリーズが完結しています。これからぜひ読もうと思います。絶対読みます。
「守り人シリーズ」リスト
・精霊の守り人
・闇の守り人
・夢の守り人
・虚空の旅人(外伝)
・神の守り人 来訪編
・神の守り人 帰還編
・蒼路の旅人
・天と地の守り人 第一部 ロタ王国編
・天と地の守り人 第二部 カンバル王国編
・天と地の守り人 第三部 新ヨゴ皇国編
ところでバルサは三十歳。「おばさん」とか「中年」とか書かれてるんですけど…え?そうなの?三十歳ってそうなの?(涙)。…まぁこんなにかっこよくて大活躍だからいっか…。(じゃぁこんなにかっこよくもなく活躍もしない私は…?きゃー!)