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呑まない日はあっても読まない日はない。というわけで、その日に読んだ本をできるだけ記録してみようという試みで始めました。コメントなど書いていただけるととてもよろこびます!
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フィッシュストーリー [伊坂幸太郎]
4104596027フィッシュストーリー
伊坂 幸太郎
新潮社 2007-01-30

「動物園のエンジン」「サクリファイス」「フィッシュストーリー」「ポテチ」の四作品が収録された、短編集です。

伊坂作品の十三作目にあたるこの本。過去の物語に登場したあんな人物やこんな人物の物語…!ということで、あらたに人が登場するたんびに「この人はあれか?何かに出てきたのか?誰だ?どの作品だ?」と逐一疑いながら読み、そしてもちろん自分の記憶力を全く信用しておらず、限界もよーく承知しているわたくしとしては、疑っても疑ってもきりがないわけで…なんか読み終わったらすごくぐったりしました。ふぅ!って、集中する場所が違うだろと(笑)。

ちなみに、正解は伊坂幸太郎ファンサイト「無重力ピエロ」にて読後に確認いたしました。(ありがとうございます!!これがなかったら家中ひっくり返して全部再読しないとけないところでした)。うーん、『重力ピエロ』は最近ちょうど文庫を再読したばっかりだったので、記憶が新しかったからよかったものの、『ラッシュライフ』あたりになるともう絶望的でしたねー。『オーデュボンの祈り』『アヒルと鴨のコインロッカー』がかろうじて…って感じ。はっはっは。…あれ、結局再読したくなってきちゃったじゃないですか。

あと人物のリンクだけじゃなくて、セリフとかそういうのの「リンク」も楽しかったです。「本屋に行って○○○を○○わけでもあるまいし」とか!おぉ〜。

でもまぁそんな楽しみ方をするだけじゃなくて、それぞれの作品がそれぞれに、「あぁ、伊坂さん!」という感じでとっても楽しめます。あの巧妙さに、しばしやられます。それはもちろん保証付き。まぁ書くまでもないことですけれどね!

個人的には「フィッシュストーリー」が一番好きでした。自分の仕事にちょっと関係のある世界の話だからっていうのもあるし、なんかもうこの物語自体にやられちゃった!っていうのもあるし。現在と過去と未来、時空を超えて語られるこの物語。その繋がりに、時の流れに、もう完全ノックアウトです。「誰かに届くんだろうか?」「伝わるんだろうか?」。そんな迷いを常に抱えながら、でも、「音楽」がもたらすささやかな奇跡を、こんな小粋な奇跡を、信じたい気持ちになりました。自分の存在の小ささを、肯定したい気持ちになりました。思いは、きっといつか、どこかに届きます。それが、思ったところと少し違っても。素敵なことじゃないですか。よーし、仕事がんばろう!

※「ポテチ」もすんごくよかったんですけどねー!迷った末に「フィッシュストーリー」に軍配が。物語もすごく好きだし、なによりあの「野球マンガ」を愛して止まないので…。あれがコンソメじゃなくてのり塩(コイケヤに限る)だったらこっちが勝ってたかも…!
(以上、ムダ話でした)。
| あ行(伊坂幸太郎) | comments(16) | trackbacks(18) |
終末のフール [伊坂幸太郎]
4087748030終末のフール
伊坂 幸太郎
集英社 2006-03

あと3年で世界が終わるなら、あなたはどうしますか?
「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されてから5年。発表当時の大混乱も少し落ち着いてきたそんな時期、そこで生きる人々の暮らしは…。

表題作「終末のフール」のほか、「太陽のシール」「篭城のビール」「冬眠のガール」「鋼鉄のウール」「天体のヨール」「演劇のオール」「深海のポール」の全8編を収めた連作短編集です。

なんだかもう、手にとっただけで「これはいい本だな」というのが伝わってくるようなそんな本で、いろいろいい評判(なぜこれが直木賞候補じゃないのか!とか)も聞いていて、珍しく買って手元にあったにもかかわらず、ずっと読まずにいた本です。今回やっと手にとって読みました。そして、一気に読むのではなくて、収録されている短編を一日一つとか二つとか、そういうペースでゆっくりと読みました。なんか、この本にはそういう読み方のほうがふさわしい気がしたのです。一つずつ、じっくりと、大切に。

描かれているのは悲しい世界です。死も、暴力も、欺瞞もあふれたそんな世界です。でもそんな世界が、さも「悲しそうに」、さも「つらそうに」描かれているのではなくて、むしろ淡々と、「混乱が落ち着いた小康状態」であるこの世界同様に、落ち着いてあっさりと描かれています。どんなにひどいことも、どんなにつらいことも、普通のことみたいに、あたりまえみたいに。

その「淡々」がそのまま真っすぐ胸を打ちました。何でもないように書かれた文章に、なんでもないように交わされる会話に、何度も涙ぐみました。号泣というのとは違う、胸の奥のほうから、じんわり涙がわいてくる感じ。読んで、「読んだよ!」って誰かと熱く語りたいんじゃなくて、自分の心の中にそっと置いておきたいような、「読みました」「読みましたか」って目をあわせてにっこりして、それで終わりにしたいような、そんな感じ。

熱い本じゃない、地味なのに、でも伝わってくる気持ちは熱い、そんな本でした。生きるってことは権利じゃなくて義務。私も、みっともなく、じたばたとあがこうっと。そう思いました。

Today is the first day of the rest of your life.
今日という日は残された日々の最初の一日 (by Charles Dederich)

【追記】
特集サイト」の隠しキャラが全部見つかりません(涙)。
「演劇のオール」の創作秘話を読むにはどうしたらいいのでしょうか!?ヘルプミー!
(3日がんばったので、もう自分を許しました)。

【追記の追記】
きゃ〜!書いてみるものですね。ゆうきさんが教えてくださいました。
これでやっと全部の創作秘話を読むことができます!ありがとうございました!
| あ行(伊坂幸太郎) | comments(21) | trackbacks(18) |
陽気なギャングの日常と襲撃 [伊坂幸太郎]
4396208138陽気なギャングの日常と襲撃
伊坂 幸太郎
祥伝社 2006-05

人間嘘発見器・成瀬が遭遇した刃物男騒動と押し込み強盗事件。演説の達人・響野のもとに持ち込まれた「幻の女」の謎。正確無比な“体内時計”の持ち主・雪子の会社の同僚に届いた謎の芝居の招待券の真意。そして天才スリ・久遠が居合わせた中年男の襲撃現場。―史上最強の天才強盗4人組が巻き込まれたそれぞれの事件。だが一見バラバラに見えたそれらの事件は、華麗なる銀行襲撃の裏に突如浮上した「社長令嬢誘拐事件」と奇妙な連鎖を始め…。

陽気なギャングが地球を回す』の続編です!!!!(←うれしい。)
今回これを読むに当たって、『地球を回す』のほうを再読したのですが、うーん、何度読んでもおもしろいです…。映画も見たのですけれど、映画より断然原作!!!でも頭の中の彼らの顔が、うっかり映画の面々に…(おそるべし映像の力)。

でもやっぱり、とにかく面白い!このひと言に尽きます。読ませる読ませる、笑う笑う…ノンストップです。ストーリーも、伏線も、もう言うまでもなく見事なのですが、そういう細かいことじゃなくて、そんなことは置いておいて、ただもう、ほんとに読んで面白いです。面白かったです。

今回は特に、響野と久遠の会話が最高でした…!今すぐにでももう一度読みたいなぁ、読んじゃおうかなぁ…。
| あ行(伊坂幸太郎) | comments(20) | trackbacks(21) |
砂漠 [伊坂幸太郎]
4408534846砂漠
伊坂 幸太郎
実業之日本社 2005-12-10

仙台の大学を舞台に、北村と彼の仲間たち、鳥井、南、東堂、西嶋ら、男女五人が繰り広げる青春物語。

大学に入学した「春」の章からはじまり、次の年の夏、またその次の年の秋、さらにその次の年の冬…ときてまた春になるまで。各章ごとに、大学生活四年間のそれぞれの季節の物語がつづられています。

なんというか…思いっきり「大学生」だったあのころにトリップしたような、そんな感覚を覚えました。別に、私の学生生活がこんなだったわけではありません。むしろそれだけをとったら全然違います。少なくとも犯罪に巻き込まれてはいないですし(笑)。

でも、やっぱりほとんどの時間を一緒に過ごした仲間たちが私にもいました。「友達」じゃなくて、「仲間」。クールなやつも、熱いやつも、バカみたいに軽いやつも、お調子ものも、人気者のかわいい子もいました。彼らといっしょにバカなこともやったし、痛い目にもあったし、楽しいこともたくさんやった。恋愛もしたし、ちょっぴり真面目な話を熱く語ったことだってあったし、なんでこんなことが自分たちに起こるんだろうって呆然としたことだって、超えられない壁の前で立ちすくんだことだってたくさんあった。そういう、自分の中にずっと存在している「あの頃」に、気持ちがふっと戻ったような…そんな気持ちになりました。もうあれから何年…ですか?歳とったなぁ!(笑)

この小説の魅力はもう、登場人物たちのキャラクターの魅力に尽きると思います。みんなそれぞれ違ってて、でもそれぞれが魅力的で、仲間で。彼らのことが大好きになりました。「青臭い」って、振り返ってみるとなんてかっこいいのかしら!麻雀は全然わからないので、そこのシーンが若干つらかったですが、でもそんなことはささいなことです。そして主人公たち五人も大好きですが、何気に幹事の莞爾くんが結構気に入りました。だってわかるもん、その気持ち…!彼は影の主役だと思います。

大学を出て飛び込んだ社会が「砂漠」なのかどうかはわからないけれど、でも「砂漠に雪を降らせてやる」って思う気持ち、強く信じられる気持ち、そういう気持ちだけはいつまでも忘れないでいたいなぁと思いました。

そして、これを期にわたしもぜひ麻雀を覚えよう!と思いました。
なんてことは、まるでない。

【追記】
ちなみに、作中に登場する「家裁の調査官」って…彼ですか!!!
(↑大好き!!!)

【感謝】
活字中毒日記」のトラキチさんのおかげでこんなに早くこの本を読むことができました。ほんとうにありがとうございました!
| あ行(伊坂幸太郎) | comments(36) | trackbacks(33) |
呼吸 (エソラ vol.2) [伊坂幸太郎]
4061795740エソラvol.2
講談社 2005-06-26

エソラ vol.1に掲載された『魔王』の対にあたる作品です。

『魔王』の主人公だった安藤の弟の潤也と、その彼女だった詩織が、今回の主人公です。舞台は『魔王』から五年後。潤也と詩織は結婚し、仙台で暮らしていますが、そんな中「国民投票」が行われることになり…というひきつづき政治色の強い?作品です。前作では語られなかった結末めいたことも語られ、想像はしていたもののショックを受けました。

物語は詩織の視点から語られていきます。彼女は…なんというか「その他おおぜい」のうちの一人です。決して特別ではない、この世の中のどこにでもいる大多数。私自身がそうであるのと同様に…です。だから、彼女の考えていることは、なんだかそのまま自分の考えてることのようだし、彼女を「甘いなぁ」「バカっぽいなぁ」と思ったら、それはすなわち自分が甘くてバカっぽいというのを認めているのと同じことなのです。目に入る範囲の中だけ、ものすごく狭い世界で生きている詩織、私。そんな自分がわかっているから、恥ずかしくて。今、まさに総選挙の数日前というこの時期にこの作品を読んで、読んでいる間、ずっとそういう恥ずかしい、歯がゆい思いでいっぱいになりました。

『魔王』で描かれた「考えろ考えろ」と突き進んだ安藤の姿勢、そして『呼吸』で描かれる「考えない考えない」という世界。スピードも空気感も全くちがう、『魔王』が直球なら『呼吸』はスローカーブ、まさに対を成す作品です。

これは、ここで終わりにしてほしくありません。絶対続編を出して欲しいです。出さなきゃだめです!!この「エソラ」は不定期刊行とのことなので、vol.3がいつ出るのか、そこに掲載されるのか、そもそも刊行されるのかすら全然わかりませんが、絶対に読みたいと思います。
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死神の精度 [伊坂幸太郎]
4163239804死神の精度
伊坂 幸太郎
文藝春秋 2005-06-28

短編集のような連作小説のような、この物語たちの主人公は「死神」。彼らの仕事は、一週間後に死ぬ予定になっている人間について調査し、その死が「可」なのか「見送り」なのかを報告すること。調査のために彼らは対象となる人間のそばに「人間」の形となって姿を現しますが…。

読み始めて最初のうちは、ちょっと「あれ?」って思っちゃいました。お話が短いせいなのか…自分の中で盛り上がらないうちにあっさり終わっちゃう感じがして。それぞれの短編は、ミステリ風だったり、恋愛小説風だったり、味付けも違えば展開も違くて、それはそれで楽しめるのですが、なんとなく「あれ?」というのが消えなかったのです。でも、伏線が生きてくる後半に行くにしたがって、そんな気持ちも薄くなったので一安心でした。

死神が主役だけあって「死」がばんばん出てくるのに、その「死」の扱いは決して重たくありません。最初、それはそれでどうなのかなぁと思っちゃったりもしたんですけど、でも主人公が「死神」なんだから、その視点なんだから、それでいいんだ、それはそうだ、と後から妙に納得しました。そして感心しました。

この死神「千葉」さん。すっとぼけているというのか、ズレているというのか。飄々としていて、全てを超越していて。でも「ミュージック」をこよなく愛しているところがなんかご愛嬌で。(なんというのか、この黙々と夢中な感じが…。)

そんな彼が対象人物を見つめる目はどこまでもクールで淡々としています。どれだけいっしょにいても、事情を聞いても、へんな感情移入はしない。その冷めた視線、それゆえに描き出される人々の姿、人間の生きる姿というのが、とてもよかったです。そして、つい情にほだされて「見送り」を連発するようなことがないところも。これがそうじゃなかったらなんか、ダメなお話になってたんじゃないかな…と思いました。

一番好きなのはやっぱり最後の「死神対老女」。さすが伊坂さん。読み終えて、この余韻にひたりました。「一生懸命頑張って、どの子も凄く似合う髪にしてあげたから」というセリフには泣きそうになりました。

【追記】
巷では「この本で今度こそ直木賞だろう!」という声も高いこの作品ですが、私個人としては『チルドレン』で獲ってほしかったという気持ちが大きいです。『チルドレン』で獲れなくてこれか…と思ってしまうのです。でも受賞作品をはずすのが得意な直木賞ですから(?)、それもありかなぁと思ったり…。
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魔王 (エソラ vol.1) [伊坂幸太郎]
406179552X小説現代特別編集 エソラ [esora] Vol.1 2004.12
伊坂 幸太郎 吉田 修一 真鍋 昌平 他
講談社 2004-12-03

収録されている伊坂さんの「魔王」目当てに読みました。

よかった!すごくよかったです。やっぱり伊坂さん好きだぁ!と愛の告白みたいなことを思ってしまいました。私の中での伊坂さんベストランキングを考え直さねば…。衝撃でした。ほんとに、すごくよかったんです。

テーマはとても重いです。正直、伊坂さんがこういうものを書くとは思ってもみなかったので、驚きました。政治、外交、国際問題…そしてファシズム。日本という、この国の将来。勝手に「伊坂幸太郎、渾身の力作」という言葉が浮かんでしまいました。いや、別にすごく力が入ってるとか、重量感漂うとかではなく、ただ、なんだかすごく迫力があったのです。どしっと。

もちろん「伊坂節」は健在です。(このテーマをこのカラーを失わずに書けるところがまずすごい。)登場人物たちも皆いい感じ。特に主人公・安藤さんの弟の潤也くんとその彼女の詩織ちゃん、最高です。(伊坂さんの書く「弟」はいつも絶品!)テンポよく進む会話。散りばめられたおもしろエピソード。途中何度も声に出して笑いがもれました。

でも、そんな中で、安藤が感じている不安、恐怖。そんなものがとてもリアルに伝わってきて、自分も怖くなりました。ありふれた日常の中に少しずつ忍び込んでくる狂気。誰もそれと気づかない間にいつの間にかそこにある。それがどれだけ怖いことかを、この物語はまざまざと目の前にみせつけてくれました。そして自分が漠然と「イヤだ」感じていたことは、でもどう伝えていいかわからなかったことは、言葉にすると、文字にするとこうなるんだ、ってこと。私は「彼ら」のようにならないって言える?怖いです。怖かったです。

ちなみに、このタイトルになっている「魔王」は、シューベルトの「魔王」から取っているようで、作品の中にも登場するのですが、そこを読んでからあの、小学校の時に習った「おと〜さん、おと〜さん、まお〜うがいま〜」ってところが(ここしか覚えてない。)頭から抜けなくなりました。あの曲も怖かった…。

そして!何よりも私の中でツボだったのは「冒険野郎マクガイバー」が登場すること。しかも結構重要な役(?)ではないですか。びっくりしました。まさかこんなところで彼に会うなんて!最愛の彼に!もっとも「考えろ、考えろ、マクガイバー」ってセリフ、テレビのマクガイバーはもうちょっと軽い感じで言うんですけどね。ここではなんか切羽詰った感じで、追い詰められそうでちょっと怖かった。でもマクガイバー!私の大好きなマクガイバー!折りしも今日この2005年7月1日から待ちに待ったドラマ再放送が始まるマクガイバー!「そこで俺は考えた」きゃー!なんというかもうこれは…私とマクガイバーの絆?運命を感じました…!!(っていうか運命です。間違いなく。)

ちなみに、マクガイバーを演じた俳優さんの名前が「リチャード・ディーン・アンダーソン」。アンダーソン?安藤さん? ほら!

と、なんだか違うことで盛り上がってしまいましたが、とにかくこのお話は心にどっしり残ります。ズキリときました。だって、伊坂さんが書いているこの世界は、お話の中の世界じゃない、今、私たちが生きているこの世界なんですから。彼が憂えているのは「私たち」なんですから。

「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決するんだ。」
「今」これを読むことができて、よかったと思います。伊坂さんが、これを書いてくれて、よかったと思います。まだ、これを「怖い」と思えるうちに、読めてよかった。この本は伊坂さんが政治についてどう思っているとか、どう考えているとか、そういうメッセージなわけではありません。ただ、これを読んで読み手の「私たち」がどう考えるか。どう感じるか。彼が教えてくれたことを、無駄にしないようにしなくっちゃと思います。こんなふうに誰かが何かに立ち向かう姿を、ばかみたいかもしれないその姿を、ただかっこいい!と思うだけではなく…。
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グラスホッパー [伊坂幸太郎]
4048735470グラスホッパー
伊坂 幸太郎
角川書店 2004-07-31

妻を殺された復讐をするため「非合法的」な会社に契約社員として入社した「鈴木」。相手を殺すのではなく自殺させる、自殺屋「鯨」。上司にこきつかわれ、不満たらたらの殺し屋「蝉」。そして交通事故に見せかけて人を殺す「押し屋」。まったく関係ないはずだった彼らの思惑が交錯したとき…。

正直、読み始めたときは、あれよあれよという感じですごい描写(!)が次から次へと展開されるのに翻弄され、読むのが苦しかったです。えー、なんかいつもの伊坂さんと違う…と思ったりもしてしまいました。でもやっぱり先が気になって、一気読み。そして最後が…えーと、よくわからなかったんですけど…。そこのところだけ、何度も読み返してみました。でもわかんない…。これ、ハッピーエンド…のような、そうじゃないような…。

途中で出てくる登場人物たちの会話は、やっぱり軽妙でおもしろかったですし、魅力的なキャラクターたちだし(健太郎くんと孝次郎くんかわいいし…)、ぐいぐいひっぱられるストーリー展開もさすがです。「やるしかないじゃない。君の言うとおり。」ってところには毎回きゅんとしたりもしました。それでも全体に漂うこのやるせなさというか…暗さというか…。現実と虚構、この境界線がどんどんわからなくなってくる怖さというか。そういうものをひしひしと感じてしまって、読み終わってもその感じが抜けなくて、どよーんとしてしまいました。

いや、読んで損はないです。オススメです。オススメですが…最初の伊坂さん作品としては読まないほうがいいかな!と。

そしてタイトルになっている「グラスホッパー」。これがバッタだということは知っていたので、どうしてこんなタイトル?と思っていたのですが、読み終えたら意味がわかりました。そっかぁ…。

参考:グラスホッパー公式ホームページ
| あ行(伊坂幸太郎) | comments(10) | trackbacks(8) |
陽気なギャングが地球を回す [伊坂幸太郎]
4396207557陽気なギャングが地球を回す
伊坂 幸太郎
祥伝社 2003-02

おもしろい!もう何も考えずに読んで笑って気分爽快な小説です。

人が嘘をついていれば必ずわかる、人間嘘発見器の成瀬。演説大好き、でも嘘ばかり言ってる男、響野。動物愛好家にしてスリの達人、久遠。精密な体内時計を持った紅一点、雪野。「世の中には犯罪らしい犯罪が必要だ」というわけで、彼らの職業(?)は銀行強盗。最強のチームタッグで成功をおさめてきた四人組ですが、あるときアクシデントが発生して…。

謎解きがどうこうというより、彼らの会話がもう最高。響野と奥さんの会話も最高。伊坂さんの書くキャラクターは皆なんて魅力的なんだろう!と感心しきり。だってパッとページを開いてそこをいきなり読んでも、誰が言っているセリフかちゃんとわかるんです!

展開はスピーディーだし、小ネタもびしばし満載だし、伏線もばっちり最後に生きていて愉快痛快、どんどん読めちゃいます。彼らもどんどん行っちゃいます。このままどこまでも行っちゃってほしい!私は何の役にもたたないだろうけど、このギャング団に入れてほしいなぁ…。

そして伊坂さんのあとがきによると、彼ら四人は伊坂さんが「サントリーミステリー大賞」の佳作を受賞したときの作品にすでに登場しているそうです。というわけで調べてみました。「悪党たちが目にしみる」という作品でした。これが全面改稿の後刊行されたのがこの作品、と。ふむふむ。出版されてないんだ…でもそれも読みたいなぁ。
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アヒルと鴨のコインロッカー [伊坂幸太郎]
4488017002アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂 幸太郎
東京創元社 2003-11-20

引っ越したばかりのアパートの隣人、河崎の口車にのせられ、書店強盗につきあうはめになった大学生、椎名。気が付けば河崎に言われたとおりに、書店の裏口にモデルガンを持って立っている自分。そしてそんなことまでして河崎が盗もうとしているのは「広辞苑」一冊だという。彼の真意はいったい…?

「ミステリ・フロンティア」記念すべき第1回配本です。

交互に描かれる「現在」と「ニ年前」の物語。最初は「ずいぶん陽気な明るい感じだなぁ〜。」なんてのんきに思いながら読んでいたのですが、刻々と進んでいく現在とニ年前の「時」に、タイムリミットが近づいているような焦燥感を味わいながら、途中で読み止めることができず、一気に読みました。そして泣きました。今思い出しても、思い出し泣きしそうです。

あのエピソードも、あのセリフも、あのしぐさも、あぁ、そうだったんだ!と最後に思わせる。それを思い返すだけで、涙が出る。なんと言っていいのかわかりません。切ない、というのとはまたちょっと違う…、でも涙、涙です。この人の書く物語は、もう「ミステリー」とかそういうくくりをしなくていいのだと思います。そういうことを考えないで、ただ、そのまま読んでほしいと思います。ほんとに、もう、みごと、でした。
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