「いいよんさんわん」――近所に住む老人に頼まれたという謎の探求書リスト。コミック『あさきゆめみし』を購入後、失踪した母の行方を探しに来た女性。配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真……。駅ビル内の書店・成風堂書店を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘の良いアルバイト店員・多絵のコンビが、さまざまな謎に取り組んでいく。初の本格書店ミステリ、第1弾!
「ミステリ・フロンティア」第23回配本です。
本屋さんを舞台にした、書店員さんがメインのミステリィっていう設定がなかなかおもしろかったです。主役の杏子と、探偵役を務める多絵。てっきり杏子が探偵もやるんだと思ってたので、この配役はおもしろいなぁとも思いました。
収録されているのはいずれも短編で「パンダは囁く」「標野にて 君が袖振る」「配達あかずきん」「六冊目のメッセージ」「ディスプレイ・リプレイ」。連作短編ですが、それぞれがそれぞれに工夫を凝らしてあって(って表現もおかしいかな?)、味付けが違うので、続けて読んでいても飽きさせませんでした。
これがデビュー作なのでしょうか?略歴みたいのがついていなかったのでよくわかりませんでしたが、なかなかよかったです。それぞれのキャラがもう少したっていたらなぁと思わないでもなかったのですが、それは今後のお楽しみ!ということで。(もうすでに続編が出ているようなので、これから読みたいと思います。)
それにしても、私は本屋さんで「こんな本が読みたいんですが」なんていう漠然とした相談をしたこともないし、しようとも思ったことないので、そういう人が結構いるらしいということにびっくりしました。まぁ過去の経験から店員さんを信用していないというのもありますが…。(小川洋子さんの名前くらい知ってろっちゅーねん)。ネットで調べればたいていのことはわかるっていうのもありますし。でも、ちゃんといい店員さんがいるお店を見つけて、そういうおつきあいをしてみたいなぁとも思いました。
というわけでこの本、実際の書店員さんが読んだらもっとおもしろいんだろうなぁ。いろんなエピソードが満載だし(ちょっと詰め込みすぎかとも思いましたけど)。でも…実際の書店員さんから見て、この本屋の店員たちの職務態度はどうなんだろう…。あまり本への愛!!が感じられないような…そんなことないですかね?!なんかもっとこう「プロ」意識を持って欲しいような気がしたのですが、それはまぁ今後に期待ということかしら。「本が好きで好きでたまらないので本屋で働いてます!」って人はあんまいないのかなぁ。本屋で働けてうれしくないのかなぁ。
そしてちょっとだけごめんなさい。あの、この最後におまけでついている対談みたいなの、いりますか?読んでつまらないとかそういう意味じゃないですけど、へぇって思っておもしろいんですけど、でも「内輪もりあがり」みたいで、部外者である私にはちょっと…。本文を読んでいても感じられたソレが、このおまけで増幅されて、最後に興ざめしてしまいました。すいません、自分が仲間じゃないからさみしいんです…うらやましいんです…疎外感なんです…。
そんな狭い心はおいておいて、表紙がおもしろいですね〜。今までに配本されたミステリ・フロンティアをずらっと並べてあります。表紙の絵が全部本物とは違うっていうのが凝ってますね。25回配本予定が変わってしまったのはご愛嬌ということで…(笑)。
ちなみに収録されているそれぞれの中で、私が好きだったのは「標野にて君が袖振る」と、「六冊目のメッセージ」でした。…恋愛がからめばよいということかしら??