プロフィール
chiekoa

呑まない日はあっても読まない日はない。というわけで、その日に読んだ本をできるだけ記録してみようという試みで始めました。コメントなど書いていただけるととてもよろこびます!
カレンダー
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>
カテゴリー(作家さん別)
過去の読書日記
このサイト内を検索
OTHERS
  管理者ページ
  RSS1.0
  Atom0.3
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - | - |
この庭に 黒いミンクの話 [梨木香歩]
4652077939この庭に―黒いミンクの話
梨木 香歩
理論社 2006-12

雪のふる小屋にこもる主人公は、ある日、日本人形のような白い顔の少女に出会う。「この庭に」と、彼女が語りだす。「この庭に、ミンクがいる気がしてしようがないの」 不思議な魅力ある、もうひとつの「ミケルの庭」の物語。

「ミケルの庭」は、文庫版の『りかさん』に収録されていた短編です。そしてミケルというのは…『からくりからくさ』の登場人物、マーガレットの子供です。『りかさん』は文庫で読んだので、「ミケルの庭」も読んだはずなのですが、実は記憶が…(汗)。でもこの一冊、それだけでもきちんと心に染みる物語になっています。よかった…。

寒い寒い冬、こんな季節に、こんなちょっと不思議な世界の物語を。いいタイミングで読んだな!とうれしく思います。雪が降ってたらパーフェクトだったんだけどなぁ。
| な行(梨木香歩) | comments(4) | trackbacks(2) |
水辺にて [梨木香歩]
4480814825水辺にて―on the water/off the water
梨木 香歩
筑摩書房 2006-11

生命は儚い、けれどしたたかだ―。川のにおい、風のそよぎ、木々や生き物の息づかい。カヤックで漕ぎだす、豊かで孤独な宇宙。そこは物語の予感に満ちている。『Webちくま』連載に書き下ろしを加えて単行本化。

この藪を抜けて、舳先を、明るいほうへ向けよう。
エッセイ集です。いや、エッセイというか…なにかこう、もうちょっとすごいものではあります。物語のような、詩のような、一行読むだけで、どこか遠くへ連れて行かれてしまうような…そんな文章たち。静謐な世界が、ここには広がっています。目をつぶって、感じたくなります。考えたくなります。私たちが使っている「言葉」と同じ言葉で書かれているのに、何がどう違くてこんな世界が描けるんだろう…。ため息…!

個人的には「もの静か」なイメージのある梨木さんが、カヤックとは!というのにちょっと驚きましたが、いや、でもこの静かな行動力こそが、梨木さんだなぁと、読んでいたらものすごく納得がいきました。

途中こんな文章が出てきます。

ある自著の最後の章に、私の心で出来上がっていた湖のパーティーを出現させている。執念深いことである。
どれのことかわかった!!思わず笑みがこぼれました。
| な行(梨木香歩) | comments(4) | trackbacks(3) |
春になったら莓を摘みに [梨木香歩]
4101253366春になったら苺を摘みに
梨木 香歩
新潮社 2006-02

「私」が学生時代を過ごした英国の下宿には、女主人ウェスト夫人と、さまざまな人種や考え方の住人たちが暮らしていた。ウェスト夫人の強靭な博愛精神と、時代に左右されない生き方に触れて、「私」は日常を深く生き抜くということを、さらに自分に問い続ける―物語の生れる場所からの、著者初めてのエッセイ。

このエッセイ一冊を読んで、梨木さんがわかったつもりになる気は毛頭ありませんが、でも、あの本やあの物語で描かれていた世界は、こういう梨木さんのたどってきた「人生」から生まれたものなんだなぁというのが、すごく納得できる一冊でした。

「理解はできないが、受け容れる」、口にするのは簡単だけれど、行動で示すのはとても難しいことだと思います。それを実際に実践している人々がいるということ。世界を支えているのは、えらい政治家やお金持ちじゃなくて、こういう市井の人々なんだろうなとしみじみ思いました。みんなが、こういうふうになれたら、きっと…。
| な行(梨木香歩) | comments(6) | trackbacks(1) |
家守綺譚(文庫版) [梨木香歩]
4101253374家守綺譚
梨木 香歩
新潮社 2006-09

文庫になりました!あの装幀じゃなくなっちゃったんですけど、これもまたよし…。(というか単行本も持っているので問題なし)。そして心なしか単行本よりも漢字のフリガナが増えて、読みやすくなっているような…。

単行本を読んだときの感想は→こちら
今回は秋の夜長に雨の音を聞きながらの読書になりました。最高に幸せです。ゴロー…羊っぽく歩けるようになったかしら?(笑)。あぁ、あの世界から、帰ってきたくない、いつまでもあそこにいたい、そう思わせる本です。手に入らないからこそ、こんなにも美しく私たちの目にうつるのでしょうか。悲しいですね…。私たちが何かを手に入れたかわりに、失くしてしまったたくさんの美しいものが、この世界にはあります。

そしてこの文庫版には、単行本にはなかった、主人公「綿貫征四郎」の随筆「烏蘞苺記」(「やぶがらしのき」と読むのだそうです。今この文字打つのにすごく苦労しました…。)が収録されています。単行本を買って読んだ方も、読む価値あり!です。
| な行(梨木香歩) | comments(7) | trackbacks(5) |
沼地のある森を抜けて [梨木香歩]
4104299057沼地のある森を抜けて
梨木 香歩
新潮社 2005-08-30

一人暮らしをしていた叔母を亡くした久美。彼女が叔母から引き継いだものはマンションの部屋と、代々伝わってきた「家宝」のぬか床だったのですが…。

なんだか、読み始めたときと、読み終わったときと、全く違うものを読んでいたような気持ちになりました。すごく遠くに連れて行かれたというか…。すごくすごく深いところまで行ってきたなぁという気持ちです。

自分とは何か、他人とは何か、それを隔てる境界とは何なのか。太古の昔から、現在に至るまで、脈々とつながる生命の不思議。そんな壮大なテーマの物語をはじめから最後までひっぱっていくのが「ぬか床」なんですから、びっくりです。こんな小説、滅多にあるものじゃないです。すごいです。

最初の一つの細胞が抱えた、全宇宙にたった一つの存在であるというすさまじいまでの圧倒的な孤独。そしてその細胞が願う「増殖」。その孤独と願いがほんとうに一つの存在の中に両立してあるとしたら、それはどんなに苦しいことだろう―。そんな、久美が思ったのと同じことを私も思い、なんだか胸が苦しくなりました。すごく暗い穴の淵を覗き込んでしまったような…そんな気持ち。でも決して嫌な気持ちではなく…難しいですけど。

自分という存在がすごくもろくて頼りないものに思えるような、ふっと消えてなくなるような、そんな気持ちにさせる本でした。
| な行(梨木香歩) | comments(11) | trackbacks(16) |
村田エフェンディ滞土録 [梨木香歩]
4048735136村田エフェンディ滞土録
梨木 香歩
角川書店 2004-04-27

舞台はおよそ100年前。考古学の研究のため留学した若き考古学者村田の土耳古(トルコ)滞在記です。(エフェンディというのは学問を修めた人に対する敬称で「先生」というのに近いものだそうです。)

村田の下宿先に住む人々は、人種も母国も様々です。文化が違う、宗教が違う、習慣が違う。ささやかな衝突や反目もありますが、それでも彼らが同じ人と人として、そんな様々な壁を超えて心を通わせる様子が、とてもあたたかく心にしみました。ペットのオウム(この子がまたいい味出しているのです)や、「この世ならぬモノたち」にまで、注がれるそのまなざしはどこまでもあたたかです。

異国情緒ただよう情景の描写もあいかわらず見事です。格別ドラマチックな出来事が起こるわけでもないのですが、丹念に淡々と綴られる日常に、土耳古の街の雑踏のざわめきや匂い…そんなものまで感じられそうでした。時間も場所も遠くのこの世界に、私も今いるような気持になりました。

しかし、そんな平穏な日々もいつまでも続くわけではありません。否応なしに歴史の波に飲み込まれていく人たち。訪れる別離。永遠に失われてしまったあの日々がどれだけ美しいものだったのか、そこにどれだけ愛があったのか。痛みが胸につきささります。最後のほうは、涙があふれてとまりませんでした。
この物語が静かに訴えかけてくるその問いに、たくさんの人に耳を傾けて欲しいと思いました。今、こんな時代だからこそ。

そして作中に出てくるこの言葉、表紙の折り返しにも書いてあるのですが、そこだけ読んだときは「どういう意味だろう?」と思いました。でも、この物語を読んだら、その意味がわかりました。この言葉を、私も心に刻みたいと思います。

我々は、自然の命ずる声に従って、助けの必要な者に手を差し出そうではないか。この一句を常に心に刻み、声に出そうではないか。『私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない』と。

【追記】
ちなみに、この村田さんは『家守綺譚』にも登場する村田さんです。あの懐かしい面々も登場して、「おぉ、君たちも息災か!なにより!」(なんとなくあの言葉遣いが伝染るのです。)と、ちょっとうれしい気持ちにもなれました。
| な行(梨木香歩) | comments(13) | trackbacks(8) |
家守綺譚 [梨木香歩]
4104299030家守綺譚
梨木 香歩
新潮社 2004-01

たとえばたとえば。サルスベリの木に惚れられたり。床の間の掛軸から亡友の訪問を受けたり。飼い犬は河童と懇意になったり。白木蓮がタツノオトシゴを孕んだり。庭のはずれにマリア様がお出ましになったり。散りぎわの桜が暇乞いに来たり。と、いった次第の本書は、四季おりおりの天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。(帯より。)

波津彬子さんの「雨柳堂夢咄」を彷彿とさせる物語でした。なんとなく雨が似合うというか、雨の夜更けに読むのが合うというか。

舞台が古い時代(明治とか大正とか?)の日本なので、文体も古めかしく、出てくる漢字も古めかしく(読めなくて辞書を引くこと多数あり。)、不思議な雰囲気の作品です。こういう「不思議な」ものが、身の回りにごく普通にあって、人も皆それをごく普通に受け入れていた時代が確かにあったんだろうなぁ…。ちょっとうらやましくもなってしまいました。本棚において、気が向いたときにいつでも読みたい、そんな本です。

ゴロー…飼いたいです。

【追記】
この物語に登場する様々な植物の写真を載せてくださっているサイトがあります。
 →家守綺譚の植物
| な行(梨木香歩) | comments(14) | trackbacks(10) |