小学校を卒業し、中学校に入学するまでの「春休み」。12歳のトモミと弟のテツが過ごした日々の物語です。
自分がこのくらいの歳だったころ、世界はこんな風に見えていたかもしれない、自分をこんな風に思っていたかもしれない、そういうことを思い出させてくれる物語でした。バラバラになりかけた家族、中学受験に失敗した自分、近所とのモメゴト…12歳は子供かもしれないけど、でも12歳なりにいろんなことを考えて、感じて、悩んで生きてるんだということ。あの心の痛み。
描写は決して明るくありません。途中で心が苦しくなって、読むのがしんどくなってしまうようなところもありました。それでもこの先に光は絶対にあるんだというのを感じさせてくれる、そういう雰囲気の物語でした。読み終わって、とてもステキなものを読んだという気持ちになりました。家族って、いいなと思いました。
ジブリの「トトロ」に出てくるみたいな、兄弟がまだ子供同士で、ずっといっしょにいる、あの一瞬のきらきらした時間。そんなきらきらがいっぱいつまっています。
それにしてもこの兄弟はとてもステキです。トモミはなんだかんだ言っても「お姉ちゃん」だし、テツは絶妙にすっとぼけてるし(笑)。トモミがテツにいうこのセリフが、とてもお気に入りです。(テツくん、ごめんね。)
「あのね、あんたはしょっちゅう、アタマのねじ落っことすの。自分じゃ気づいてないみたいだけど」
(笑)。
「夏の庭」「ポプラの秋」と並んで、大好きな本がまた一つふえました。
#余談ですが、本の装幀がちょっと中身のイメージと違ったかな…。