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呑まない日はあっても読まない日はない。というわけで、その日に読んだ本をできるだけ記録してみようという試みで始めました。コメントなど書いていただけるととてもよろこびます!
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陋巷に在り(5)妨の巻 [酒見賢一]
4101281173陋巷に在り(5)妨の巻
酒見 賢一
新潮社 1999-06

媚術に操られた茲蓮五六による厳重な見張りをものともせず、次第に国を揺るがしかねない勢力を形成してゆく。一方、孔子の使者として費城に赴いた公冶長は、そこで意外な裏切り者と対面した。少正卯一味に攪乱される孔子一族の危機。春秋の世を戦国の世に踏み込ませていったのは誰か―。東洋の房中医学にも分け入る、興味津々の第五巻。

茲魄佞里泙泙冒爐觧厖屐自分一人の手に負えなくなった五六は、公冶長に頼んで鳥達にも監視の手伝いをしてもらうことにするのですが…また言いますけど、なんで誰も気付かないの〜!!!いらいらしてきました…。五六だけならまだしも、今回は彼が茲鮃子の家に連れて行ったりしているのに、そこで会った誰一人として気付かない。子貢なんて術の元凶である鏡の存在に気付いたのに、結局術で忘れさせられたりてるし。ちょっと…。しっかりしてよ!もう!と、なんだかもうあまりのふがいなさにげんなりしてきてしまいました。そして鳥達が…(涙)。あぁもうやっぱり子蓉嫌いかも。

費城に行った公冶長はここでやっと、悪悦が公伯寮を操って公山不狃に虚言を吹き込んでいたのが変心の原因だったということに気付きます。遅いよ!!もう!そして公冶長にはそのことを孔子に伝えるすべすらなく、なんとかその場を逃げ出し孔子に注進に及んだ冉雍も、公伯寮の裏切りこそ伝えることができたものの、一緒にいた悪悦の正体を知らず、そのことについては孔子は知らないままという始末。ここでもさらにげんなり。公冶長はこう言っちゃなんですけど役立たずだし、公山不狃も気付こうよ…ねぇ(涙)、あからさまに怪しいじゃん、あの人たち!!という感じ。っていうか孔子、これ以上に大切なことが今あるのか!忙しいとか言ってないで自分で行け!と思ってしまった私は短気です。

しかし実際その力のある人間が、本気で人をだまそうと思ったら、相手はそれがどんなに立派な人間であれ、こんなに簡単に騙されちゃうんだなぁと。そら恐ろしくなりました。悪意を持って、人の弱みにつけこむっていうのはこういうことなんだって。恐ろしいけど…でもいらつく…。この巻では孔子一門、まったくいいところがありません。やられっぱなし。あぁ、いつまで続くのこの兄弟の横暴は…げんなり。もう早く片付いてくれ…(なげやり)。

『陋巷に在り』既読リスト
陋巷に在り(1)儒の巻
陋巷に在り(2)呪の巻
陋巷に在り(3)媚の巻
陋巷に在り(4)徒の巻
・陋巷に在り(5)妨の巻
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陋巷に在り(4)徒の巻 [酒見賢一]
4101281165陋巷に在り(4)徒の巻
酒見 賢一
新潮社 1998-08

孔子一門をねらいうちにしてゆく妖艶な性魔術使い子蓉は、唯一術をやぶられた顔回を籠絡すべく陋巷を訪れ、ついに顔回の許嫁の少女・茲暴于颪Α子蓉から鏡を貰った茲世、そこには恐るべき媚術が施されていた…。一方、三都の連続毀壊を密かに企てた孔子は、協力を申し出た政敵少正卯の真意を測りかねていた――。想像を絶する凄まじい死闘が繰り広げられる急転直下の第四巻。

なんだか盛りだくさんな展開になってまいりました。茲六厖屬嶺にまんまとはまってるし、顔回はそれに気づいてもいないし。もー、なんでよ〜!「儒」のパワーはどうしたのよ〜!こういうときにこそ使うべきでしょ!肝心のときに役立たず!と、やきもきやきもき。顔路も顔路でもう、そのすっとぽけは本気なわけ?演技なわけ?これでいつかどっかいいとこ見せてくれないんだったら…このオヤジ、ほんとにただのダメスケベオヤジだ!

孔子は孔子で陰謀が上手く行きそうになったところに、また少正卯がからんできてやっと「わたしの方が罠を仕掛けられているのかもしれん」とか言ってる始末。遅いよ!気づくの!!孔子のくせに…!!しかしなんか「神がかり的すごい人」のイメージのあった孔子ですが、これを読んでるとなんか普通の人だわというか、とっても人間らしいというか人間くさいというか、そういうのも酒見さんの読ませたいところなのかしら…。あぁ、でももっとすごい能力で全てを解決してくれないと困るのに。師がこんなだから、弟子たちなんてもう少正卯にいいようにされまくり。あぁ、どうなっちゃうのでしょう…。

この少正卯、ほんと怖すぎというか気味悪すぎです。早くいなくならないかしら…。いったい真の狙いが何なのかよくわからないところが、よけい薄気味悪いのです。「泰山の礼」、ほんとにそんなこと?この巻のラストでの彼と犬との戦いなんか、読んでて気持ち悪くなってきました。いっそここで儚くなってくれていたらよかったのに…(涙)(←結構本気)。悪人ほどしぶといですね、くっ。

というわけでやきもき読んでますが、でもまぁそれも楽しというか、よかった、史実知らなくて!無知で!という気もちょっとしたりしています。この先どう歴史が転んでいくのか、全然知らないんですもん。でも今すごくそこが知りたい!先を読まなければ…。ほんと気になって夜もおちおち眠れません。

『陋巷に在り』既読リスト
陋巷に在り(1)儒の巻
陋巷に在り(2)呪の巻
陋巷に在り(3)媚の巻
・陋巷に在り(4)徒の巻
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陋巷に在り(3)媚の巻 [酒見賢一]
4101281157陋巷に在り(3)媚の巻
酒見 賢一
新潮社 1998-04

子に対抗して塾をかまえ、急速に勢力を拡大していく謎の人物、少正卯。その屋敷に住む妖艶な美女、子蓉は恐るべき性魔術・媚術の使い手だった。練達の儒者である子路をはじめ、孔子の弟子が次々と子蓉の術の虜となり、ついに魔の手は顔回へと及んだ。透徹した精神と類稀な呪術を備えた顔回さえも子蓉の掌中に落ちてしまうのか?

いやー、この巻の前半はまたなんとも…こう…セクシーな…(照れ)。さすが「媚の巻」。読んでいてどきどきしてしまいました。子蓉の魔の手(?)は子貢をたらしこみ、そしてついに顔回へ…。二人の一騎打ちのシーンはなかなかに圧巻でした。そして私、ここを読むまでは子蓉のことがなんかすごく嫌いだったんですけど、(悪魔のような媚を売って男を虜にしちゃう女なんて!)(←あれ?ひがみ?)、読んでみたらなんかそうでもないじゃないのというか…逆に可哀そうに思えてきたりもし…不思議です。

そして子蓉とのあれこれが一段落したと思いきや、今度はまたあの少正卯が怪しい動きを…。あぁ、彼は敵なのか真実味方なのか。やきもきやきもき。でも明らかに怪しいよなぁ。これで裏がなかったらなかったら嘘だよなぁ…。うーむ。やっぱりこの人は悪人に決定!違ったらごめんなさいだ!…と思って読んでいたら、うん、やっぱりそうか、正体を現したな!という感じ。くぅ、なんかむかつく。この人嫌いです。

この巻のラストには…ちょっとショック。かなりショック。顔穆が…そんな…。あまりのショックにちょっと四巻目を読むのがつらい気持ちです。うう。今まであえて語られていなかった(と私は思っていた)、太長老の娘であり、孔子の母である徴在の話も、こうやってまた新たな展開を見せていくのかな…。

『陋巷に在り』既読リスト
陋巷に在り(1)儒の巻
陋巷に在り(2)呪の巻
・陋巷に在り(3)媚の巻
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陋巷に在り(2)呪の巻 [酒見賢一]
4101281149陋巷に在り(2)呪の巻
酒見 賢一
新潮社 1997-07

儒者の抵抗によって思わぬ苦戦を強いられた陽虎は、太古の鬼神・饕餮を召喚。瞬く間に儒者の屍の山が築かれていった。その凄まじさに孔子の弟子たちは恐れをなすが、一人、顔回だけは落ちついていた…。土俗的な術を使う政敵との熾烈な闘い、媚術で弟子を次々に骨抜きにする謎の美女の登場、孔子一門と顔回は…。

感想が内容にだいぶ触れておりますので、未読の方はご注意を。

一巻目の後半から続いている「陽虎の乱」の顛末にドキドキハラハラ。いちおうこれがどう決着するのかっていうのは、一巻の中でも触れられていたわけですが、それでもドキドキハラハラ。ついに顔回(がんかい)が実力を発揮して大活躍!でかなり爽快&夢中です。ふふ。やっぱり主役が活躍するのってうれしいですよね。

そしてその乱の話はそういえばちょっと時を遡っての話だったわ、というわけで、時を戻して後半は孔子の政治家としての活躍・目論見と、それをめぐる様々な人々の動きの話。少正卯(しょうせいぼう)とか悪悦仲桀(あくえつちゅうけつ)とか子蓉(しよう)とか、この上なく怪しげな正体不明の一味も登場し、目が離せません。彼らは味方なのか敵なのか…孔子も迷ってますが、私も迷ってます。(そりゃ孔子が迷うくらいなら私が迷わないわけないよね〜と変な納得の仕方をしてみたり)。

一巻目よりぐぐっと物語も人も動き始めたこの巻。一巻目よりかなり早いピッチで読むことができました。そしてこの巻は「あぁ、孔子が罠にはめられそうで大ピンチ!」というところで終わります。やっぱりあいつは悪い奴?!くぅ〜、三巻が手元にない…!

というわけで、風邪っぴきで家にひきこもっていてヒマだったのをいいことに、思わず一気に二巻目まで読んでしまったのですが、今度は一気に十三巻読みするのはガマンしよう!となんとなく決めました。少しずつ間を空けながら読んでいこうかな、えーと、二日とか。空いてない?でもあんまり空けると漢字の読み方とか忘れちゃうし…、というか、先が気になってそれ以上はガマンできそうにありません。

『陋巷に在り』既読リスト
陋巷に在り(1)儒の巻
・陋巷に在り(2)呪の巻
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陋巷に在り(1)儒の巻 [酒見賢一]
4101281130陋巷に在り(1)儒の巻
酒見 賢一
新潮社 1996-03

今日から四月。何かを始めるにはもってこいの一日!というわけで、今年の目標であるこの『陋巷に在り』(全十三巻)を、読み始めることにしました。なぜこの本が今年の目標なのかというと、本好きのためのSNS「本を読む人々」の「励ましあって読書会」というコミュの、年間課題図書だからです。十三冊だから毎月一冊くらい読むとちょうど一年ですね!という話だったのですが、時すでに四月…あわわ。というか酒見さんの本を毎月一冊なんてペースでは読めるわけがない(我慢できないに決まってる!)ので、ちょうどいいのです。ということにしたのです。はい。

しかしこの表紙、そしてこの帯。サイキックって…なんか他にもうちょっと言い様はなかったのでしょうか(汗)。酒見さんにこんなにはまってなかったら、そして課題図書じゃなかったら、絶対手に取らなかった一冊です。今読んでいることが、いろんなめぐり合わせの結果なんだなぁと思うと、なんだか不思議とうれしくてどきどきします。

で、この絵と帯に惑わされるのをヤメにすると、普通に面白い歴史小説です。私は図書館で借りて読んでいるので帯がなく、どういう話か一秒も知らずに読み始めたのですが、どうも孔子とその弟子であった顔回の話であるらしいです(それすら知らなかった模様)。なお、今見てみた本の紹介によるとこんな感じ。

聡明で強い呪術の能力を持ちながら、出世の野心なく、貧しい人々の住む陋巷に住み続けた顔回。孔子の最愛の弟子である彼は師に迫る様々な魑魅魍魎や政敵と戦うサイコ・ソルジャーだった…息づまる呪術の暗闘、政敵陽虎との闘争、影で孔子を護る巫儒の一族。論語に語られた逸話や人物を操りつつ、大胆な発想で謎に包まれた孔子の生涯を描く壮大な歴史長編、第一部。
だからサイコソルジャーってさ…(涙)。そういう雰囲気じゃないですよ?!そういういかがわしいというか、インチキっぽい感じじゃなくて…ねぇ、なんて言うんでしょうか。この時代だったら、これもきっとこういうのも真実!っていう感じしかしません。

あの酒見さん独特の、「物語を進めつつ、途中、著者によっていろんな解説がされたり薀蓄が紹介される」形式で繰り広げられる物語。もう慣れたからびっくりしないの…大丈夫。でもこういういかにも「私が書いています」という「書き手が作中にたびたび登場する」形式って、もしかして中国の古典(それこそ「三国志」とか「史記」とか)はこういう風に書かれているものなのかなぁ、と勝手に想像したりしています。いや、想像だけですけど。知識ないですし、確かめる予定もないですけど。

で、孔子の話なわけですが…私はなにしろ自信を持って「このあたりの歴史は何も知りません!」と豪語できるほどの無知ですので、(ちなみに今悩んでいるのは「孔子」と「三国志」はどっちが先?ということです。情けないわ)、読み始めは「また全くわからない世界に来てしまった…」とめそめそしながら読んでいたのですが、あらあらどうして読み進めるうちにちゃんと(それなりに)わかるようになってくるし、物語はものすごく面白いし、もう夢中!ってな感じに。相変わらず漢字が読めませんが…そこは雰囲気で。(それもだいぶ上手くなった。しみじみ)。

この巻では魯に仕える孔子の政治的活躍と、その弟子として立ち回る顔回の物語を軸に、「儒とはなにか」「礼とはなにか」みたいなことが丁寧に語られています。なんとなーく知っているようでいて、全く知らないこの世界を、こんな風に読んで知ることができるのはとても幸せです。どういう思想があって、どういう文化があって、当時の人々が生き、生活していたのか。そういうことがきちんとわかります。同時に、当時の社会情勢というか、いわゆる「歴史」の動きも追っていくわけで、勉強になることこの上ない。そしてそれが面白いんですから、もう文句なしです。

そして今思い出しましたが、私、小学校低学年の頃「論語」を習ってたんでした。なぜ?!なぜそんなものを習っていたのかしら?!本気でなぜ習う羽目になったのか覚えていません。内容も「子曰く、なんだっけ?」くらいに何も覚えていません。教室に行く日はおこづかいを50円もらえて、それで焼き鳥屋で毎回「皮」を買って食べてたことは覚えてるんだけど…。あれ。ほんと、なんでそんなの習ってたんでしょうね?古代中国の歴史とか言ってる場合じゃなくて、ほんの三十年ばかりの自分の歴史がすでに不明です。

さ、二巻に行かないと…。
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後宮小説 [酒見賢一]
4101281114後宮小説
酒見 賢一
新潮社 1993-04

時は槐暦元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に立ち向かうはめに…。

個人的にはハズレが大変に少なく、とても信頼している「ファンタジーノベル大賞」。その記念すべき第一回受賞作が『後宮小説』という作品だということは知っていましたが、それが(最近マイブームの)酒見賢一さんの作品だということを知ったのがつい最近で、それは読まないわけにはいかないわ!ということで、慌てて読みました。つながってなかったわ…不覚。

しかしすごいですね、これがデビュー作とは…。第一声が「腹上死であった、と記載されている」ですよ。いきなりですよ。人を食ったというかなんというか…すごい。度肝を抜かれてしまいました。あとはもう夢中で一気読みです。私の大好きな、こう、「途中で著者がちゃちゃを入れる形式」はデビュー作からだったんだなぁ!と感慨もひとしお。

泣き虫弱虫諸葛孔明』は、実際の「三国志」を元に書かれているわけですが、この作品は違います(ですよね?)。さも『泣き虫…』と同じように、「きちんとした過去の資料・文献があって、史実に基いて書いています」ふうですが、違います(ですよね?)。これだけの世界を、頭の中だけで構築できちゃうって…ほんとすごい。すごいです。

なお、これも不勉強で知りませんでしたが、この作品はアニメ「雲のように風のように」の原作だったのですね。見たことはないですが、タイトルは知ってました。でも…こっちを先に読んじゃうと、「え?これを?アニメに??(お、大人向け?!)」って思っちゃうんですけど…、いったいどんなことになっているのでしょうか…。見たい。ものすごく見たいです。(逆にアニメから入って原作を読んだ人はどう思うのかしらなんて余計な心配をしてみたり…)。
文庫版のあとがきで酒見さんがアニメについて書いていらっしゃるのですが、いわく、

「たのむわ…菊凶」
と一言言っておきたい。それから、
「王斉美をだせ」
とも付け加えたい。もう一つ、
「双槐樹と王遥樹のインセストタブーな関係が変更されたのは仕方がありません。でも、幻影達たちが遊郭で遊びまくるところは入れて欲しかった」
と小声で言いたい。
気になるコメントじゃないですか。こんなこと言われたらますます…見たくなってまいりました。DVDが出てるみたいだから、探しに行っちゃおうかな〜。

そして、この作品がファンタジーノベル大賞を受賞したときの選考委員・高橋源一郎さんの選評が、あまりにもすばらしく感動してしまいました。うん、素晴らしい…。

『後宮小説』にあって『宇宙のみなもとの滝』にないもの、それは淡い哀しみを帯びた「軽さ」である。この小説の「軽さ」は軽薄短小の「軽さ」ではなく、重力から逃れてあることの「軽さ」だ。『後宮小説』の世界では、登場人物もそこで起る重要なあるいはどうでもいいような事件の数々もそれらを包み込んで流れる歴史もそしてそのすべてを語る作者の声もその一切が重力の軛を逃れて浮遊している。この「軽さ」は内閉的な夢を語ることによってではなく、ついに重力から逃れることのできない我々というやっかいな存在の運命を直視することによってしか得られることのできない宝庫なのだ。われわれはこの稀な宝物のことを「ファンタジー」と呼んできたのである。
あと、解説で書かれている「ファンタジーとは」も、読んでいてすごく目からうろこというか、間違ってましたごめんなさいと思ったのでここに書いておきます。

ファンタジーとは本来、人間の頭の中にしか成立しない代物であり、可視の現実以外の世界を思い描く能力であって、それ以外のいかなる規制も存在しません。とすれば、各人の個性がそれぞれ異なるように、人間の個体の数だけ異なるファンタジーが当然あってよいはずなのに、なぜか我国ではファンタジーといえばともすれば妖精とか魔女とかいった外国種のキャラクターが出没する領分や、もしくは現実逃避のための便法などと誤解されて、安易な類型的作品があとを絶ちません。
…おっしゃるとおりです。自分の偏ったイメージを反省、そして修正。今まで「日本ファンタジーノベル大賞」は懐が深いなぁと思っていたのですが、そうじゃなくて、「ファンタジー」というものの懐が深いのですね。私が浅かったのです。「ファンタジーノベル大賞」これからもついて行きます!
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墨攻 [酒見賢一]
4101281122墨攻
酒見 賢一
新潮社 1994-06

戦国時代の中国、特異な非攻の哲学を説き、まさに侵略されんとする国々を救援、その城を難攻不落と化す謎の墨子教団。自ら侵略することは決してなく、ただ「守る」ことを旨とするその教団の俊英、革離(かくり)が小国・梁の防衛に派遣された。迫り来る敵・趙の軍勢は2万。梁の手勢は数千しかなく、城主は色欲に耽り、守備は杜撰であった。果たして革離はたった一人で城を守り通すことができるのか?

泣き虫弱虫諸葛孔明』で酒見さんにはまった私。この本もああいうテイストなのかなぁと思って手にとったのですが、そしてああいうテイストだったらいったいどういうふうに映画にしたんだろうと思っていたのですが、読んでみたら、おぉ、こういう風だったのか!と。(なんか「こそあど言葉」ばっかりだ…)。

で、そういう意味では期待していたのとは違ったわけですが、でもそれはいい方向に期待を裏切ってくれました。なんだ、ああいう風に面白おかしく書かなくても、こんなにおもしろいんじゃん!と思ったのです。何が不満って、本が薄いことが不満…。もっともっと長く細かく読みたかった!というのが正直な感想です。

圧倒的多数の軍勢に、たった一人でどう対抗するのか?!という設定にもう心騒ぐわけですが、そのやり方がいちいちかっこいい。読んでいて爽快ですらありました。「プロ」であり「職人」であり、あぁ、ああいう人たちの矜持というのはこういうものかと、痺れました。惚れ惚れしました。

そして私はこの物語を、「本当にあったこと」だと思っていたのですが、違うのですね!あったのは「墨子」という素材だけで、そこから膨らませたのがこの物語だったのだそうです。あぁ、もう酒見さん…!脱帽です。

【墨守】
《中国で、思想家の墨子が、宋の城を楚の攻撃から九度にわたって守ったという「墨子」公輸の故事から》自己の習慣や主張などを、かたく守って変えないこと。
ここからきているこのタイトル「墨攻」。なんか、いろんなことを思ってしまいます。守ること、そして攻めること…そして、その意味を。
 
映画も見たいかも…!  http://www.bokkou.jp/
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泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部 [酒見賢一]
4163251200泣き虫弱虫諸葛孔明 第2部
酒見 賢一
文藝春秋 2007-02

つい先日、『泣き虫弱虫諸葛孔明』にまさかのどっぱまりをしたわたし。第弐部が出た!というので早速手を出してみました。まだ記憶が新しいから、それなりにつながる…!ちょっとうれしいです。(ちなみにつながらなくても全然楽しいです、これ)。

この巻では、えーと、孔明が劉備軍に参加して、いろいろあって、曹操の軍から逃げるところまでのお話です(たぶん)。例によって例のごとく、この部分がいわゆる「三国志」の中でどんな位置づけなのやらよく分かりませんが。(っていうか「三国志」って、こんなに孔明メインの話じゃないんですよね?きっと)。

そもそも物語を最初から順に追っている、というよりは、ストーリー的にはネタバレありありで、(いつ誰がどうやって死ぬとか出てきちゃうし)、時間軸も場所もあちこち飛ぶし、「こんな説もこんな説もあるけど、でも両方嘘である」とかいきなり「三国志考証」になだれ込んだりするし。ええっ?ストーリーはどうした…!うーん、でもまぁ読んでるとこんなに楽しいからまぁよし!問題なし!なんて素晴らしい本なんでしょう。しかしほんと、そういうのを読んでいると、酒見さんの頭の中にはどれだけ知識が詰まってるんだろう!と、愕然としてしまいます。尊敬してしまいます。すごすぎます。はぁ〜。

しかし、基本の「三国志」を知らずに、この本だけを読んでいるわたくし。今後世の人と三国志について語るときには注意しないと、へんなこと言いそうだなぁと思います。ところで、ぐんしー孔明はいつかっこよくなるのかしら…ならないの?もしかして?!あ、でも今回はやっと最後にキラリとひかる秘術を見せつけてくれた…ような…?あり?

ちなみに、今回一番ツボにはまったのは「フランスの世論はきっと張飛の見方をしてくれる」でした。…あれか!!!(爆笑)。

なお、「別冊文芸春秋」で連載されているこの作品、これで終わりじゃないよね?まだ連載やってるんだよね?と思いチェックしてみたら、2007年3月号で「第参部開始」という記述が。おぉ!やってる!でも、え?開始って…始まったばっかりなの?!というわけで、本になるのをクビを長くして待っております。漢字の読み方と登場人物たちを忘れる前に…ひとつよろしくです。(無理だろうなぁ。3年コースだ…。)(あ、でもさすがにこれだけ各自のキャラが強烈だと、そうそう忘れないかも…!)
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泣き虫弱虫諸葛孔明 [酒見賢一]
416323490X泣き虫弱虫諸葛孔明
酒見 賢一
文藝春秋 2004-11-25

まずこの本を読み始める前の私の状態を説明すると、

・「三国志」って…昔の中国でいろんな国が入れ替わったり戦ったりしてたときの物語…だっけ?違ったっけ?三国って言うのはやっぱあれでしょ、魏・呉・蜀(そのくらいは歴史の時間に覚えた)でしょ。でもそれぞれがなんだったっけ。結局どこが勝つんだっけ。あれ、そもそも三国志はそういう話じゃない?

・ゲームにもなってたりしてるんだから、マニアックに好きな人がたくさんいて、そういう人たちは「オレは○○が好きだな!」「いや、やっぱり△△最高だよ。」みたいなキャラ愛トークを繰り広げるに違いない…。

・諸葛孔明は、えーと、名前は知ってる。あれ、でも諸葛亮孔明じゃなかったっけ。一文字足りない?あ、字みたいな?ところで何をした人だっけ?でもパソコンで漢字変換すると一発で出てくる!…やっぱ有名なんだわ。(ちなみに「劉備」も出たので結構感動しました。おぉぉ〜、すごい!!(普通?))

・中国の地理はまったくわかりません。

というまぁ、ひどいにもほどがあるというか。そういう状態で読み始めました。で、どうだったかというと…これがびっくり!おもしろかったのです!あれまぁ。

どういう小説かというと…「三国志」(「三國志」?違うものらしいけれど違いがわからん)を題材に、そのストーリーを展開しながら(推測。だってもとを知らないから)、作者である酒見さんがそれにちゃちゃを入れる、というお話です(たぶん)。私の理解によると、諸葛孔明っていう人がいて、その人はものすごーく変な人で、びっくりするほど奇人変人で、彼がどうやって劉備に仕えるようになるのか?ってとこまでのお話です。

もともとのいわゆる「三国志」を知ってたら、「それがこうくるか!」みたいな面白さもきっとあるのでしょう。なんも知らないのでそういう楽しみ方はまったくできなかったのですが(悔しい)、それでもこの本、読むだけでものすごーーーく面白いです。電車の中で読んじゃだめくらいのもんです。ちなみに私は電車の中でも読んでしまいましたが…たびたび吹き出して怪しいことこの上なかったと思います。(クスっなんてかわいいレベルじゃなく、笑える。ぐはっ!とか、うはははは!ってくらいに)。そもそも、ストーリーの展開を楽しむ本ではないんだろうなぁ…「後にこうなる」とかいうネタバレを普通にしてるし。とにかく面白く読む本です。うん。だいたいもう本の紹介から笑えます。曰く「ほんとうの孔明は、こんな人じゃなかったと思う」(作者談)。

読んでる最中はとにかく人の名前に苦労しました。ひたすら漢字が読めないのです。先にこの本を読んでいたざれこさんから「漢字は雰囲気で!」というアドバイスをいただいていたので、その勢いで読んでいたら「袁」という文字のつく人の区別が一人もつかなくなりました。(でもほんとに問題なかった)。あと「劉備」=「劉皇叔」で、「劉表」=「劉景升」だってことに半分を過ぎてから気づきました。ちなみにそれまで「劉皇叔」と「劉景升」は「劉」の字が付く三文字の人というジャンルでひとくくりでした。

…すいません。でもそれでもおもしろかったんです!この本!!酒見さんはこの本を書くのにどれだけ「三国志」のことを勉強したんだろう…。すごくよくわかってなきゃ、逆にここまで書けないんじゃないか?!と思ってしまいます。すごいなぁ。

ちなみに、この本自体は劉備が諸葛孔明に会いに行く「三顧の礼」(それも名前くらいは知ってた)のシーン(それが「三国志」中でどのあたりの話なのかはやはり知らない)で終わっているのですが、それで「もっと読ませて!!」と思ってしまうわけなのですが、本日(2007年2月23日)まさにその続編、『泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部』が発売だそうです。おぉ、運命…。読みますよ、読みますとも!!

4163251200泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部
酒見 賢一
文藝春秋 2007-02-23

【追記】
ちなみにどこもかしこもおもしろかったこの本の中で、一番ツボにはまってしまい笑いが止まらなくなったのは「Romance of the Three Kingdoms」のくだりでした。どのくらいおかしかったかというと、こらえきれず吹きだしたら、それまで口を閉じて笑いをがまんしていたせいで鼻水が(すいません、乙女なのに…)出そうになってしまい、慌てて花粉症のふりをしたくらいにおもしろかったです。くくくくく…(思い出し笑い)。
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