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呑まない日はあっても読まない日はない。というわけで、その日に読んだ本をできるだけ記録してみようという試みで始めました。コメントなど書いていただけるととてもよろこびます!
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銀の犬 [光原百合]
4758410690銀の犬
光原 百合
角川春樹事務所 2006-06

「音」の力でこの世に想いを残す魂を解き放つ、祓いの楽人(バルド)、オシアン。声を失った楽人オシアンとその相棒ブランの旅を描いた物語。

これはいいです。私こういうの大好きです。不満があるとすればこの本がまだ一冊しか出ていないこと…。もっと読みたいんですけど!なんというか、このタイトルじゃもったいなさすぎます。(いや、これはこれでステキなタイトルなんですけど)。もっと壮大な、もっとシリーズ感のある(ってどんな)タイトルにしないと!それでサブタイトルを「銀の犬」にして…。(ってどこまで突っ走るのかしら)。

ケルトの民話・伝説なんかがいろんなモチーフになっているみたいですが、そういうのを知らなくてもこの世界に飛ぶには何の問題もありません。知っていたらもっと楽しめるのかなぁと思うと、素養のない自分が悔しいですが。そう、こんなふうにファンタジーの世界に「飛ぶ」気持ち…、久しぶりに思いだしました。『指輪物語』とかそういう、子どもの頃に読んだ外国の壮大なファンタジーの、これはプチ日本版という感じ?こういうのって、実はあんまり他になかったんじゃないかなぁ…。すごく楽しみです。だからほら、もっと壮大なシリーズ感のある…(以下略)。

死者の魂を行くべき場所へ導く「祓いの楽人」の物語である関係上、どのお話にも「死」の影が色濃くつきまといます。理不尽に、残酷なほどに訪れる死。でもそれでも、それを受け入れて、また新しい何かを見つけていけるような、生きて、そして死ぬことの意味をちょっと見つけられるような、悲しくて優しくて、切なくて暖かい、とてもステキなお話たちでした。

声を出せないオシアンと、その彼を心から慕い、サポートしていくブラン。このブランって子がとてもかわいく…おしゃべりすぎなところもまたよし。こういうこましゃくれた感じの男の子、大好きです。ブランとオシアンがなぜ一緒に旅をしているのか、この絆はどうして生まれたのか、そんなこともこの先の物語で明らかになっていくのかなぁと、いろいろ想像して楽しみにしています。(あとがきを読んだらまだまだ続きます!って書いてあったので…!)
| ま行(光原百合) | comments(4) | trackbacks(2) |
時計を忘れて森へいこう [光原百合]
4488012205時計を忘れて森へいこう
光原 百合
東京創元社 1998-04

高校生になると同時に清海に引っ越してきた少女・若杉翠。ある日森の中に迷い込んだ翠は、不思議な青年、深森護と出会います。シーク協会の自然観察指導員である護と、翠の織り成す、やさしい物語。

これは…とてもよかったです。謎解きがどうとか、ミステリィがどうとかいう以前に、全編に描かれている人と自然の関係、自然の営みの厳しさと美しさ、そして人と人のふれあいの暖かさ、そんなものがとにかくステキな物語でした。私もいますぐここへ行きたい。木を抱きしめて、勇気をわけてもらいたい。真っ暗な夜の中で一人空を見上げてみたい。そんな思いでいっぱいになりました。おおた慶文さんの装幀画もいい雰囲気です。

「悲しみ」はいつか癒される。時間がかかっても、いつか乗り越えていける。けれども、純粋な悲しみに何かが、「嫉妬」や「後悔」や「罪悪感」が混ざったとき、それは「苦しみ」に変わってしまう。悲しみは人を優しくするけれど、苦しみはただ人を蝕んでいく。悲しみを減らすことはできないかもしれないけれど、せめて苦しみを悲しみに蒸留してあげたい。救うことはできないけれど、少し楽にしてあげることはできるかもしれない。自分にできることを、何か少しでも、せめて。そういう人の気持ちが暖かくて、心打たれました。

私の生きているこの土地で、こんな風に圧倒的な自然を感じながら生きていくことはむずかしかもしれないけれど、でも、きっとここでもできることがあるはず。人間は弱い生き物だけれど、でも、まっすぐな気持ちを持って、誰かを思いやって生きていくことはできるはず、ですよね。
| ま行(光原百合) | comments(8) | trackbacks(11) |
最後の願い [光原百合]
4334924522最後の願い
光原 百合
光文社 2005-02-23

劇団φ(ファイ)を新設すべく東奔西走する青年・度会と風見。旗揚げに協力してくれるメンバーを探す彼らがめぐり合った、さまざまな人々の物語を綴った連作短編集です。

各短編の主人公は、度会たちではありません。彼らはあくまでも脇役。主人公は彼らが劇団に参加して欲しいと声をかけた人々です。作家だったり、デザイナーだったり、女優だったり…。度会たちは、そんな主人公たちのかかわるちょっとした「謎」について真相を明らかにしていくという役回りです。

度会と風見はもちろん、それぞれの主人公もとても魅力的で、生き生きとしていてよかったです。だんだんと劇団のメンバーが増えるにしたがって、登場人物が増えていくのもなんだかうれしくて。ハラハラもさせられ、なんだろう?そうだったのか!と驚きもし、心温まるシーンもあれば、思わず涙ぐみそうな場面もあり。とにかく面白く読みました。『十八の夏』からこの作品まで、二年か三年だと思うんですけど、なんかすごく上手になったなぁと思いました。(えらそうにスイマセン。でもなんかすごく読みやすかったので…。)

連作短編集というよりは、むしろ一つの長編のような、そんな読後感の物語です。「最後の願い」というこのタイトル、いったい誰の「願い」だったのかな…。
みんなの、それぞれのかな…。そんなことを思いながら本を閉じました。
| ま行(光原百合) | comments(12) | trackbacks(10) |
十八の夏 [光原百合]
4575234478十八の夏
光原 百合
双葉社 2002-08

表題作でもある「十八の夏」の他、花をモチーフにした四つの短編が収録されています。初めて読んだ光原さんの本です。

ミステリーと帯の紹介に書いてあったのですが、特にミステリーという感じはしなかったです。(読み違い?)あと印象に残ったことは、四つの短編の主人公がみんな男の人なこと。なんか意外でした。(勝手に女性が主人公の話だと思い込んでいたので…。)男性が主人公で、こんなに全体がやわらかい感じって、すごいなぁ。どのお話も特にインパクトがあるというわけではないんですけど、なんだかゆったり読めました。そして、どの短編にも漂う、どこまでも希望を失わない感じが…とても気持ちよかったです。きっと作者さんの人柄なんだろうなぁと、妙にそう思ってしまう物語たちでした。

受験に失敗して浪人生になった男の子と、年上の女性の、ひと夏の物語「十八の夏」。妻を亡くした書店員が恋に落ち、八歳の息子にどう伝えるか悩む「ささやかな奇跡」。恩師の“娘”に恋をしたらしい兄を持つ弟が語る「兄貴の純情」。

この「兄貴の純情」に出てきた、ちょっと変わったダメお兄ちゃんの、全然ダメじゃない一世一代の名台詞。

「人間ってのはな自分勝手なもんだ。人のためって言ったって、たいていは自分のために行動してる。誰かのために何かをするのは結局、その人が悲しむのを見ると自分がつらいからだ。その人が喜ぶのを見ると自分がうれしいからだ。それでいいんだよ。ただそれを忘れちゃいけない。それを忘れると、自分はアンタのためにこんなにやってあげたって優越感が生まれる。なのにアンタは返してくれなかったって恨みが残る。馬鹿な話だ。」
一番心に残りました。ズキっとしました。
ほんと、それじゃ馬鹿ですよね。このことを、ちゃんと忘れないでいられるような人間になりたいです。(難しいですけど…。)

そしてこの本の一番最後に収録されている「イノセント・デイズ」。妻の実家の塾で先生をしている主人公のところに、ある日、教え子だった女の子が六年ぶりに突然姿を現します。六年前、彼女にふりかかった忌まわしい出来事とは…という物語です。

他の作品に比べてこれが一番ミステリー色が強かったかなと思います。なるほど、内容は結構ドロドロしているし、恐ろしいことを書いているのですが、雰囲気がそうでもないのがなんだか不思議です。主人公の男の先生がどこまでもやさしいからかな…。作品中に出てきた、広島の県花「夾竹桃」のエピソードも、知らなかったですし、そしてまさにこのタイミングで読んだことで、とても心に残りました。ラストもよかったです。

【追記】
最後のあとがきを読んで、雑誌に連載していたときの挿絵を井筒啓之さんが担当していたということを知りました。それ見てみたかったなぁ…。(←大ファン。)
| ま行(光原百合) | comments(10) | trackbacks(7) |