「あなたの人生のターニングポイントは?」そう聞かれて思い出す、あの一日。高校を卒業して三日目、明日からは社会人という、あの春の一日。十八歳の少年の心を鮮やかに描いた、青春小説です。
肩を壊して野球選手への夢をあきらめた主人公・沢木圭太。無気力な日々を送っていた彼ですが、その日はなんだか、駆け落ちすると息巻く友人を手伝ったり、不良グループと因縁のケンカをしたり、初恋の女の子と再会したり、いろんなことがいっぺんに起こります。さらにひょんなことから「相撲取りになろう!」と熱烈アタックされ、そのあおりで決まっていた就職は取り消されてしまい、挙句の果てには親戚一家の斬った張ったの乱闘騒ぎに巻き込まれ…。これが、(これ以外にもいろいろが)、ほんとうに全部たった「一日」に起こったのですから、なんとも忙しい一日です。
そしてこの小説は、そのたった一日の物語なのです。学生でも、社会人でもない最後の一日。その一日を過ごして、圭一が何をどう感じて、そしてどう変わったのか。人は一日でこんなにも変わることができるのかという、おどろきに満ちた物語でした。若いって、すごいですね。まさに可能性のかたまり。
圭太に起こった出来事もすごいですが、彼を取り巻く周りの友人たちもなんとも個性的な面々でユニーク。真面目くんあり、おとぼけくんあり、熱血くんあり…。なんだか読んでいてうらやましくなりました。こういう「友人」って、女の子同士じゃほぼありえない。こんな関係は築けない。男同士ならではだなぁ…って思いました。ほんと、うらやましいです。いいなぁ!
そんなわけで、私は女ですから、読んでいて「へぇ、そういうものなのかぁ。」とただ感心してしまうような部分(ほら、あの、その、そういうこととかですよ!)があったりして、懐かしい思いをするということはあまりなかったのですが、それでもなんだかほほえましいというか、心があったかくなりました。そういうところもあわせて楽しめました。男の人が読んだらもっと面白いんじゃないかなぁ…。
【追記】
「四月になれば彼女は」というと、つい大好きなキャラメルボックスのお芝居の方を連想してしまう私…。そのせいで、このタイトルを聞いて浮かぶ曲は、読んでる間ずっと頭の中に流れていた曲は、サイモン&ガーファンクルの「April Come She Will 〜四月になれば彼女は」ではなく、ポリスの「Every Breath You Take 〜見つめていたい」なのでした…!