ナラタージュ―映画などで、主人公が回想の形で過去の出来事を物語ること。これは、もうじき結婚するはずの女性・泉が語る、忘れられない恋の物語です。
すごく話題になっているということは知っていたので、どんなもんだろうとちょっと穿った気持ちでどきどきしながら読んだのですが、なるほど。読みはじめたら止まりませんでした。思っていたより全然よかったです。見くびっていてすいませんでした…。私には絶対こんな恋はできないけど、この物語はとてもせつなく胸に響きました。
誰かが誰かを想う気持ち。こんな風にしかできない。登場人物の誰のその気持ちも、わかって、痛くて、他人事だけど、もどかしくて、苦しくて。そういうのをリアルというのかなと思いました。自分が誰のことを本当に好きか、誰を誰よりも愛しているのか。嘘じゃないけど、でも…。そういうのって、すごく残酷。でもその残酷さも、含めてリアルでした。
時が経つにつれて、静かに静かに秘めてきた気持ちが、こらえきれなくなる。あふれる感情を抑えきれなくなる。その冷たさと熱さが見事で。そしてラストシーン。いい!こういう「人の弱さ」がいとおしくていとおしくて、喉がつまりました。
ちなみに、読みながら私が思ったことは「この感じは…そう。『冬のソナタ』に似ている!」でした。(いい意味でですよ!私は『冬ソナ』好きなのです。)
どうしても惹かれあってしまう運命の恋、でもどうしてもうまくいかなくて、自分を愛してくれる他の人とつきあってみたりして、でも結局うまくいかなくて、やっぱり忘れられないみたいな。はたから見ているともどかしくて、でも本人たちは一生懸命なあの感じ。主人公がユジンさんで、先生がヨン様で、小野君がサンヒョクですよ。(うーむ、わかる人にしかわからないですね、これ…。)
誰が似てるって特に小野君が…。すごく似てる。これはほんとにサンヒョクそっくり。行動がすみずみまで、くまなく似ている…。
細かいエピソードやラストはもちろん違うんですけど、やっぱりこういうことって、誰にでも覚えがあることなのかもしれないなと思いました。こんな思いを抱えたまま、それでもなんとかやっていく、いかなきゃいけないこと。
こんな風に人を好きになるということ、そんな相手と出会えるということ。この恋は苦しいけれど、それはちょっとうらやましいと思っちゃったりもしました。
このラストシーンが、物語のラストなのではなく、むしろここがすべての始まりのような、ここからまた始まるような、そんな気もする物語でした。