ペットボトルをアッという間に分解する“ポリクイ菌”。透明人間の鍵を握る素粒子“ミエートリノ”。ついに出来た?!不老長寿の妙薬。はたまた1万年後の考古学座談会…マッド・サイエンティストたちの可笑しくもかなしい大発明の数々!得意のパスティーシュやパロディの手法を駆使し、科学的蘊蓄を注ぎ込み、かつ笑いを追求した会心の連作集。
ユーモラスで、でもそこはかとなくアイロニー。笑いながら、でも「笑ってる場合じゃないんじゃないの?」っていう警報が頭の中でチカチカします。効いてますね〜!清水さんらしい一冊です。
特に印象に残ったのは「鼎談 日本遺跡考古学の世界」。今から一万年後の世界で、考古学者や日本歴史研究家が「過去の日本」(つまり「21世紀現在の日本」)について語り合うという文章なのですが…めちゃくちゃ笑えます。例えば「東京新宿遺跡」から発掘された「トチョーシャ跡」について。「つまりトチョーシャは何らかの理由で、ムダに大金をかけて、あきれるしかないほど堅牢に建てられていたがために」他の建物とは違って一万年後にまで残ったとか、「厚底ブーツ」はトチョーシャという神殿に使える巫女がはいていたんだとか、もうメチャクチャです。でも…1万年後の学者の説明にも無理がないというか。たしかにあんなわけのわからない履物、「あれを履いて15センチ神に近づく」なんて宗教的な色でもつけなきゃ説明できないよなぁとも思ったり。
そう考えていくと、今現在の我々が、遺跡を発掘したりしてもっともらしくいろいろ説明している「あれこれ」も、もしかしたらてんで見当違いで間違っているのかなぁとか…実際当時の人に聞かせたら笑われちゃったりして?!なんてことを、沖縄で首里城の遺跡や今帰仁城跡を見たりしながら思いました。