世田谷線沿線に暮らす人々の、ささやかな日々を描いた短編集です。
お母さんとケンカして、離婚したお父さんのところに家出した男の子。その家で彼が出会ったのは…「閣下のおでまし」。恋人を失いスナックで働く女性の恋の物語「犬が笑う」。定年退職まであと十日というところで部下の若い女性にもちかけられた相談とは…「ハッピー・バースデー」。雑貨やでパートを始めたバツイチ女性の物語「普通の名字」。退屈な会議を抜け出して、犬に逃げられたおじさんの手伝いをしようとした青年ですが…「コーヒーブレイク」。女優になるはずが、冴えないタレントとしてカメラ小僧の被写体になっている女性がある日デパートで出会ったのは…「五歳と十ヶ月」。デブで仕事もうまくいかず、すっかりくさっていた彼を変えたものは…「意外な兄弟」。先に逝ってしまった夫との思い出に思いを馳せる老女の物語「うぐいす」。
それぞれがちょっとずつリンクしているようなしていないような…そんな物語たち。ちょっぴり切なかったり、でもくすりと笑えたり、あったかい気持ちになったり、元気をもらったり。どこにでもいる普通の人々の、こういう姿というのはやっぱりいいものだなぁと思いました。
一番好きだったのは「意外な兄弟」。ラスト、彼に拍手を送りたい気持ちになりました!(ところで世田谷もなかは実在するのか?!)
なんでもない気分のときに、なんとなく読むのがいいような、さりげない物語。読み終えて、タイトルのとおり、はなうたを歌いながらお散歩にでかけたくなる、そんなお話たちでした。