ストーカー、偏愛、幼女わいせつ、虐待、売春…。日常以上、犯罪未満の<異常な愛>をテーマに、俊英が放つ短編小説集。
「怪物」「春の痣」「アフターファイブ」「犬心中」「運動靴」「ハズレくじ」「芽吹く」「隣の子供」という七つの短編が収録されています。まったく独立した一つのお話だったり、少しずつリンクしたものがあったり、物語の色も形も様々です。そしてどの物語も、とても強烈な印象を残します。だいたい短編集って、読み終わってからタイトル見なおしても「なんだったっけ?」ってことが多いわたし(かなりダメ人間)なのですが、これに関しては全然そんなことありませんでした。
日常と非日常の境界線。そのぎりぎりの線を踏み越える一歩手前のような、すでに踏み越えてしまっているような、そんな主人公たち。でも、非日常に思える日々、それすらもすでに日常なのかもしれない。怖いというのともなにか少し違う…うまい表現が見つかりませんが、読んでいて心臓がばくばくする感じがしました。
特に好き…というか気になったのは「春の痣」と「犬心中」。「犬心中」なんてどう考えても全然私の好みじゃない感じの話なのに、すごくひきつけられました。なんなんでしょう…。
読み終えてから、表紙の絵をあらためてじっくり見ました。彼女のこちらを見る視線に、口元の微笑みに…また心臓がぎゅっとしました。