| ぶたぶた 矢崎 存美 廣済堂出版 1998-08 |
ベビーシッターを頼んだはずが、やってきたのはぶたのぬいぐるみだった?!
バレーボールくらいの大きさ、少し反り返った右耳、つぶらな黒い点目のぬいぐるみ。彼の名前は、山崎ぶたぶた(性別♂)。歩き、喋り、食事をし、見かけによらず仕事は優秀。そしてなによりもの特徴は、とってもかわいいこと。ぶたぶたと出会った人間たちの、姿と心の動きを描いた連作集。
最近見つけて読みたい!と思っていた「ぶたぶたシリーズ」の一作目にあたる作品です。文庫にもなっているそうなので、買おうと思ったのですが、今現在絶版になっているらしく…手に入らなかったので図書館で借りました。でもほんと、買って手元に置いておきたい本なのです。とっても。
この本には「初恋」「最高の贈りもの」「しらふの客」「ストレンジ ガーデン」「銀色のプール」「追う者、追われるもの」「殺られ屋」「ただいま」「桜色を探しに」の九編が収録されています。あるときはベビーシッター、あるときはタクシーの運転手、またあるときはフランス料理のコック…。様々な職業のぶたぶたが、彼らの前に現われます。
このぶたぶたさんの性別は「男」です。でも男の子…ではなく、どちらかというと年齢的には「おじさん」。ビジュアルと中身が〜(笑)。でもそこがいい!というか、もう、ぶたぶたさんはぶたぶたさんで、彼が彼であればなんだかそれでよいのです。読んでいるうちに、どんどん彼が大好きになります。
みんな最初はびっくりして、でもいつの間にかなじんで、そして彼と出会ったことで何かがちょっと変わったことに気付く…そんなステキな物語がぎっしりつまっています。あったかくて、ちょっと寂しくて、でもステキ。しかし絶版…古本屋をめぐってなんとか入手したいと思います。だって何度も読みたいんですもの!
そしてこの連作短編、全部個別の話かと思いきや…ずっと読んでいくと最後の「桜色を探しに」で「おぉっ?!」と思うことができます。これは鮮やか!時を越えて、場所をこえて、ぶたぶたさんはいつもそこにいます。ぶたぶたさんよ、永遠に…!