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呑まない日はあっても読まない日はない。というわけで、その日に読んだ本をできるだけ記録してみようという試みで始めました。コメントなど書いていただけるととてもよろこびます!
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村田エフェンディ滞土録 [梨木香歩]
4048735136村田エフェンディ滞土録
梨木 香歩
角川書店 2004-04-27

舞台はおよそ100年前。考古学の研究のため留学した若き考古学者村田の土耳古(トルコ)滞在記です。(エフェンディというのは学問を修めた人に対する敬称で「先生」というのに近いものだそうです。)

村田の下宿先に住む人々は、人種も母国も様々です。文化が違う、宗教が違う、習慣が違う。ささやかな衝突や反目もありますが、それでも彼らが同じ人と人として、そんな様々な壁を超えて心を通わせる様子が、とてもあたたかく心にしみました。ペットのオウム(この子がまたいい味出しているのです)や、「この世ならぬモノたち」にまで、注がれるそのまなざしはどこまでもあたたかです。

異国情緒ただよう情景の描写もあいかわらず見事です。格別ドラマチックな出来事が起こるわけでもないのですが、丹念に淡々と綴られる日常に、土耳古の街の雑踏のざわめきや匂い…そんなものまで感じられそうでした。時間も場所も遠くのこの世界に、私も今いるような気持になりました。

しかし、そんな平穏な日々もいつまでも続くわけではありません。否応なしに歴史の波に飲み込まれていく人たち。訪れる別離。永遠に失われてしまったあの日々がどれだけ美しいものだったのか、そこにどれだけ愛があったのか。痛みが胸につきささります。最後のほうは、涙があふれてとまりませんでした。
この物語が静かに訴えかけてくるその問いに、たくさんの人に耳を傾けて欲しいと思いました。今、こんな時代だからこそ。

そして作中に出てくるこの言葉、表紙の折り返しにも書いてあるのですが、そこだけ読んだときは「どういう意味だろう?」と思いました。でも、この物語を読んだら、その意味がわかりました。この言葉を、私も心に刻みたいと思います。

我々は、自然の命ずる声に従って、助けの必要な者に手を差し出そうではないか。この一句を常に心に刻み、声に出そうではないか。『私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない』と。

【追記】
ちなみに、この村田さんは『家守綺譚』にも登場する村田さんです。あの懐かしい面々も登場して、「おぉ、君たちも息災か!なにより!」(なんとなくあの言葉遣いが伝染るのです。)と、ちょっとうれしい気持ちにもなれました。
| な行(梨木香歩) | comments(13) | trackbacks(8) |
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コメント
おぉ、いいですね。確かに読んでみたくなりました。
僕は梨木香歩さんの文体のあのタイム感がとっても好きなんです。
だから、きっとまた気持ちいい時間に浸れそうですね。
| kadock | 2005/07/22 1:10 PM |
読んでください!そして泣いてください!
いや、主観の押し付けはいけませんね…。
でも、ステキな時間を過ごせることだけは太鼓判です!
| chiekoa | 2005/07/22 4:30 PM |
「おお、君たちも息災か!なにより!」って、わかりますー。
これは「家守綺譚」と、2冊セットで買っちゃおうか・・というくらい好きです。
| june | 2005/07/22 10:03 PM |
そうですね〜!二冊あっていつでも手に取れたら幸せかもです。
いつでもあの世界へ…。
| chiekoa | 2005/07/24 12:06 AM |
ほんとにこれは素敵な作品ですよね〜〜
『家守綺譚』とペアで本棚に並べて、背表紙を眺めるだけでも小一時間はうっとりできそうな気がします(笑)。
| ちょろいも | 2005/07/24 11:20 PM |
できます!できますとも!!
いいなぁ。ちゃんとした本棚ほしいなぁ…。
(部屋に置くスペースがないので、クローゼットにすべて平積みです…(涙))
| chiekoa | 2005/07/24 11:47 PM |
100年前の土耳古にいるような気分になりました。
ラストの手紙や「友よ!」の声。心に染みます。
| なな | 2005/10/09 4:00 PM |
ほんと、染みますよね…。
今思い出してもちょっと泣きそうです…。
| chiekoa | 2005/10/11 11:30 AM |
やっと読みました。いや、これは、「家守綺譚」の姉妹編でありながら、全然別の世界。いい話ですね。
| すの | 2005/10/23 5:38 PM |
こんにちは。
これ、やっと読みました。すっごい好きでした。
わたしったら、なんで積読しちゃったんだろう?って感じです。
「おぉ、君たちも息災か!なにより!」には笑わせてもらいました。
私は、「家守綺譚」も未読だったりします。
早めに読もうと思います。では。
| ゆうき | 2006/04/03 10:51 AM |
積んでたんですかっ!!!それはもったいないです〜!!
でも私もそういう本、いっぱいあります。
「なんでもっと早く読まなかったんだ!私のバカ!」みたいなの。

とりあえず、早く『家守』読まないとですよ!(押し付けがましいわたし。)
| chiekoa | 2006/04/03 5:47 PM |
記事で紹介させてもらったのでTBをおくったのですが、どうもうまくいかないのでコメントさせていただきました。
お久しぶりです♪最近、更新なさっていないようですがお元気ですか?
同じく最近更新していなかったのですが久しぶりにいくつか記事を書いています。

文庫化されたので『村田エフェンディ滞土録』を読みました。
『家守綺譚』といい、やはり梨木香歩のこの昔のことを書くときの字体いいですね。なんというか心地いいです。そのあたりが日本人なのでしょうねw
| 大葉 もみじ | 2007/06/21 8:47 PM |
だいぶ時間が経過した記事へのコメントですみません。
この作品を文庫版で読み、検索をしていたらたどり着きました。

単行本の表紙の折り返しにある梨木さんの言葉は、文庫版ではないようでした。
『私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない』
今も西アジアの遠い国において人々が犠牲になっています。
作品は100年も前の物語ですが、梨木さんのうったえは今の時代に生きています。

参考になりました。ありがとうございます。
| 夕螺 | 2007/07/05 9:35 AM |
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