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呑まない日はあっても読まない日はない。というわけで、その日に読んだ本をできるだけ記録してみようという試みで始めました。コメントなど書いていただけるととてもよろこびます!
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遮光 [中村文則]
4104588024遮光
中村 文則
新潮社 2004-07-01

「私」が黒い袋に入れ、大事に持ち歩いている瓶に入っているもの、それは―。

「狂気」の話なのでしょうか。でも、私は読んでいてどうしてもそう思えなかった…。狂気とひと言でくくってしまうには違和感がある。何か、何かソレとは違うもの。

この主人公である「私」の姿が、淡々と語られているその姿が、読んでいる私に、ものすごく苦しかったです。「自分」というものがなくて、でもそのことについて具体的にはなにも思っていなくて、全ての行動がどこかで見たような演技でありフリでありわざとであって、「こうしたらこうなるだろう」「ここはこうする場面だろう」、そんな感情で行動して、その結果に陶酔したりする、そんな主人公の姿が。そういうふうにしたいんじゃなくて、そういうふうにしかもうできない、そんな主人公の姿が。

そんな彼が持ち歩いているのは、死んでしまった恋人の「指」です。友達たちには彼女が死んだことを隠して、さも元気でいるかのように振る舞って、その陰でホルマリン漬けにした指を持ち歩く彼。なんとなく「演技」の流れで付き合い始めたようなことを彼は自分で言っているのに、「彼氏として振舞うこと」が楽しかったと言っているのに、それなのにその言葉と彼の取った行動は裏腹で。でも彼自身はその矛盾に何も気付いていなくて。それが読んでいる私にはとても痛々しかった…。

読み進めていくとどんどん切なくなってきます。この人は、自分でも気付いていないだけで、演技なんかじゃなくて、ほんとうに心から彼女を愛していたんじゃないかって。その気持ちが痛いし、気付いていないことが痛いし、気付いていないのにこんな行動をとってしまっていることがまた痛いのです。彼自身の中にある、彼を見つめる第三者的な眼と、私という第三者の眼と。どうしたらいいのか、わからなくなってきました。

幸福な狂人、そんなものが実際に存在するのかどうかわからないが、私には、狂人というのは一般的に幸福に見えた。美紀は私に、ずっと一緒にいてくれと言った。人間はこの世界に嫌というほどいるのだから、私一人が狂ったとしても、それは別に大した問題でもないように思えた。
好きな作品、というのとはまた違う、「泣ける恋愛モノ」というのともまた違う、でも奇妙に心につきささる、不思議な本でした。世界に存在する「どうしようもない事項」、作者さんの書かれているあとがきも、とても印象的でした。
| な行(その他) | comments(6) | trackbacks(5) |
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コメント
あ、私もゆうきさんを追っかけて読もうと思っていた本です(笑)またもや思考回路被ってますね。でもちょうど図書館で借りられてました。先越されましたわ。
ちえこあさんの感想を読んでるとますます読まないと、って気分になってきました。自分がどんな後味を持つか確かめたいです。
| ざれこ | 2006/08/03 1:03 AM |
こんにちは・・・。
この本に、最高得点マークをつけ、
主人公の、狂った男の子を「タイプです!」と断言したことで、
一部で人間性を疑われているらしい、ゆうきです(笑)。
けして「オススメですよー!」と人に言える本じゃないし、
衝撃的過ぎて、小説としてのレベルとか判断できなかったし、
でも、個人的には、「おっこれはっっっ」っていう本だったので、
思わず熱く語ってしまいました。

ざれこさーん、好みの激しく分かれる本だと思うので、
がっかりさせてしまうのではないかと、とても心配です。
あの・・・あんまり期待しないで読んでくださいね・・・。
| ゆうき | 2006/08/03 1:16 AM |
こんにちは!
あ!chiekoaさん読まれたんだ〜と感想を読ませてもらって
同じく好意的な感想に嬉しくなっちゃいました。
ゆうきさんのおっしゃるようにオススメ!って大きな声で
言える作品ではないのですけど、私は好きです、コレ。
妙に相性が良かったという点では自分の嗜好を疑わねば
ならないのかもしれませんけど…。

TBさせていただきました(*^-^*)
| リサ | 2006/08/03 8:45 AM |
ざれこさん、まさか私が先に借りちゃったとか?!
いや、この距離でそんなはずは(笑)。
ざれこさんがどう感じられるのか、感想楽しみにしています。
主人公に惚れたら…ゆうきさんとライバルですね!

ゆうきさん、ほんともうおかげさまで…ありがとうございました!
(なんだかババくさい挨拶だ)。
熱く語ってくれたおかげで読みました。感謝感謝です。
たまには私もゆうきさんになにかオススメしたいものですが…
といいつつ次は「イレギュラー」を読もうと狙っています(笑)。

リサさん、いえ、いい本ですよ、ほんとうに。
相性がいいことはすばらしい事ですよ!(自己弁護?)
オススメ!とかすごくおもしろい!とかじゃなくて、
でも確実に心にこうなにかを残す本ですよね…。
みんな、もっと読んで!
| chiekoa | 2006/08/03 11:48 AM |
初めまして。
「遮光」のレビューを検索していて
こちらにたどり着きました。
この本、私も衝撃でした。
読み始めたときの気持ちと
読み終わったときの気持ちが180度転換(笑)
いろんな人に読んでもらって
それぞれの感想を聞いてみたい作品です。
| izura | 2006/08/13 9:57 AM |
izuruさん、はじめまして。
コメントありがとうございます!
不思議な本ですけど…私も好きです。
絶対ダメ!って人もいそうですけど、
ほんと、いろんな人の感想を聞いてみたいですね!
| chiekoa | 2006/08/14 3:50 PM |
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