八年も前に別れた男、黒崎のことを忘れられない十和子。淋しさから、会社の飲み会で出会ったうだつの上がらない中年男・陣治と関係を持ち、一緒に暮らすようになる。共に暮らしながらも諍いの絶えない日々を送る十和子だが…。
わぉ、結構びっくりしました…。最初のうちはこの前読んだ『
生きているだけで、愛。』みたいな、精神的に追い詰められた女性の話なのかと思って読んでいたのですが、どうもそれだけではなく、なんかもっとすごいものでした。上手く言えないですけれど、え??そうくるの?こう終わるの?という衝撃がすごい本でした。
以下、気をつけて書きますが、ネタバレありかもしれません。
この主人公の十和子に、最初のうちはかなり驚かされました。一緒に住んでいる相手である陣治を罵倒するする、するする。それがまた容赦ないというか、私にとってはありえない激しさで、唖然。会話が大阪弁で交わされていくので、なんというか迫力も倍増というか。これだけ言えばすっきりするんじゃないか、というか、ここまで言うなら一緒にいるのやめれば?って不思議に思えてくるくらいのものでしたが…。わかるような、わからないような。でも、この話はそれだけでは終わらないのです。
そもそもこの、十和子が忘れられないという「昔の恋人」との間に、いったい何があったのか。何かあったことは間違いないのに、なかなかそれが明かされない…。気になりつつも、そうこうしている間に十和子には新しい男ができて、さらにその男がなんとも怪しいような怪しくないようなで、話はさらに複雑な方向へ…。
でも恋愛小説とかじゃないんです。これ。いや、恋愛小説なのかな…違う気がするんだけど…。うーん、「愛」を描いていることは確かなんですけれど、恋愛なんて言葉で、くくってはいけないような、壮絶な、恐ろしい本でした。そして悲しい本でした。一筋縄で行かなすぎです。『容疑者Xの献身』もびっくり…。オススメ!って声を大にして言えるような本じゃないのですが、読んだ価値は、あった本だったと思います。