事件記者の仕事がしたいのに、美術欄やグルメ記事の担当ばかりさせられることにうんざりしていたクィララン。追い討ちをかけるように行われた職場の合理化や記者クラブの近代的改装にたまりかねた彼は、亡き母の親友ファニー伯母が無料でキャビンを貸してくれるという申し出に乗り、長期休暇を取る事に。これを機にかねてからの懸案であった小説書きに取り組もうと思っていた彼を待ち受けていたのは…。
シャム猫ココシリーズ、第五弾です。第五弾ですが、この作品とこの次の作品『猫は郵便配達をする』は、どういう事情かわかりませんが翻訳を飛ばされた模様で…。第二十作目にあたる『猫は鳥と歌う』の後に発売されています。二冊飛ばして七作目の『猫はシェイクスピアを知っている』に飛んでたわけですね。それで意味は通じたのかなぁと心配して読み始めたのですが…さてさて。
今回の舞台はいつもの都会から400マイルも北にある辺境の田舎町ピカックスです。一見平和そうに見えるその町で、なにやら不穏な空気を感じ取っていたクィルですが、案の定、殺人事件が発生してしまいます。それに対する町の反応もどこかおかしい。クィルは小説を書く暇もなく事件をかぎまわります。…というかこの作品中で彼はたぶん一文字も小説を書いていません(笑)。
そして今作には前作でクィルと同じハウス・ハウスに住んでいた(そしていい感じになっていた?)ローズマリーが再登場。あら、今回のお相手は彼女のままいくのかしら〜と思っていたら、なんとなく雰囲気は険悪になり、あらら?と。「やっぱり若い子が好きだ」とか言い出すクィルにちょっと笑いました(笑)。プレイボーイめ!!
今回のココは、カセットデッキの再生ボタンを押すという業を身に付けており、それがまたまた事件を解決に導く重大な手助けになっちゃうわけです。さすがココ。スーパー猫っぷりを遺憾なく発揮しております。そして何もしないヤムヤムがそれはそれでとてもかわいく、この二匹はほんとにとってもいいコンビです。
あとがきによると、このシリーズは今後この地を舞台に繰り広げられる模様。だとしたらこの巻を飛ばして読まされてしまった人は「なぜ急に?!」ってびっくりしたことでしょう。だってこの巻では、ラストに彼の今後の人生を左右すると言っても過言ではない、かなり大きな出来事が起こるのですから!
しかし今のところイマイチこの町が好きになれない私。自然はすばらしけれど…なんか人が変…。クィルはここに住むことになるのでしょうか?(いや、だからなるらしいんですけどね)。次作を楽しみに読みます。
「シャム猫ココシリーズ」読了分リスト
1.
猫は手がかりを読む
2.
猫はソファをかじる
3.
猫はスイッチを入れる
4.
猫は殺しをかぎつける
5. 猫はブラームスを演奏する