| 最後の恋 三浦 しをん 角田 光代 新潮社 2005-12-20 |
この想い、それは、人生に一度だけ訪れる奇跡。こんなに誰かを好きになるのは、この恋で最後かもしれない。どんな結果に終わろうと、永遠に輝きを失わない恋がある。
“最後の恋”をテーマに、人気女性作家が個性と情熱で磨き上げた、宝石のような8つの物語。
個々の感想を以下に書きますが…総じてすごくよかったです。レベル高し。買おうかと真剣に思ってます。(また図書館で借りててごめんなさい。)
・三浦しをん『春太の毎日』
世界で一番愛している麻子と一緒に暮らしている春太。ところが、そこにお邪魔虫の存在が割り込んできて…。
いい!三浦さん、最高です!うまいなぁ、この人はほんとうに。大好きですこのお話。もうこの一作だけでこの本読む価値あり!です。ほんとに。
ネタ的には結構最初のうちから「…!」って思ってたのですけれど、そういうネタにびっくりしたとかやられたとかじゃなくて、そんなことは置いておいても(いやその発想もまたステキで好きなんですけど)、すごくよかったです。こんな風に愛されてみたい…なんて思ったり。うらやましくなっちゃいます。くぅ!愛だねぇ!泣かすねぇ!(なぜか急に江戸っ子。)ものすごくハートウォーミングな物語でした!
・谷村志穂『ヒトリシズカ』
普段は別々に生活し、毎年春の一時期だけ、東京の部屋で二人ですごす約束をしている恋人同士。そしてまた季節は巡り春が訪れ…。
これもまた最初オチが読めていたというか…こう来るんだろうなぁと思っていたらやっぱり来たというか。わかりやすかったですね。キライなわけじゃないですけど、そういう意味でも普通でした…。
・阿川佐和子『海辺食堂の姉妹』
脱サラして海辺で食堂をはじめた父。その食堂を切り盛りする姉妹の物語。
実は初めて読みました。阿川さんの作品…。そしてとてもよかった。初読みだけにどういう展開になるのか全然予想がつかなくて、ドキドキハラハラしたのですが、なんだか幸せな気持ちになれました。この姉妹がとっても人間らしくて素敵だからかなぁ…。ついでに、おいしいものも食べたくなりました。阿川さんの本、他にも読んでみたいと思います。(というかナゼ今まで一冊も読んでいないのか>自分)。
・沢村凜『スケジュール』
唯一の特技は「スケジュールをたててその通りに行動すること」。そんな妙の恋は…。
ラストが素敵。とっても素敵!こういう感じ、大好きです。うん。小学校のときの先生の言葉がすとんと素直に心に落ちてきて、そのひと言で人生を渡っていけるって思った主人公の気持ち。とてもよくわかります。誰かの何気ないひと言がずっと支えになってることって、ありますよね。そういう小さいエピソードとかもとても好きでした。
・柴田よしき『LAST LOVE』
かつての恋人の離婚を知った真由美。「最後の恋」の相手とはどうなったの?彼女の心の中は…。
なんかこの真由美の「結婚って、恋って、仕事って、人生って」っていう感情とかあきらめとかが、すごくリアルというか、身につまされて。短いお話なのに、読んでいてすごくどっしりと心に残りました。それだけに、このラストには救われたかも…。うん。よかったです。
・松尾由美『わたしは鏡』
大学の文芸部で発行する会誌の編集長をやることになった広呂。部室のロッカーに入れられていたタイトルも不明の物語。美容室の鏡の悲しい恋の物語の、作者はいったい誰なのか?
意外でした…!でもなんかすごく好きかも。この作中に出てくる「作者不明の物語」もすごく好きでした。
・乃南アサ『キープ』
十五歳の時のあの「誓い」にしばられたままの自分。二十年後、彼女は…。
これもまたえらく身につまされるというか…心臓がぎゅっとするような彼女の姿でした。お願い神様、どうか、どうか。繰り返される願い。自分はもう誰のことも愛せないのかもしれない―そう思ったら、それはなんて孤独だろう。どれだけつらいだろう。それだけに、このラストには涙が出るほど安心しました。他人事だけど…他人事じゃなくて。よかった。神様、ありがとう!
・角田光代『おかえりなさい』
「ぼく」が彼女に語りかける、青年のころのある記憶の物語。
このアンソロジーの中ではちょっと異色で、男性主人公の物語です。恋というよりは、家族…記憶の物語…なのかな。でもそれだけにしんみり心に残る物語でした。ラストシーンがとても印象的です。一見ハッピーエンドじゃないけど、でもほんとはハッピーエンドなのかもしれない、そんなことを思わせる物語でした。