プロフィール
chiekoa

呑まない日はあっても読まない日はない。というわけで、その日に読んだ本をできるだけ記録してみようという試みで始めました。コメントなど書いていただけるととてもよろこびます!
カレンダー
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< December 2019 >>
カテゴリー(作家さん別)
過去の読書日記
このサイト内を検索
OTHERS
  管理者ページ
  RSS1.0
  Atom0.3
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - | - |
月の裏側 [恩田陸]
4877283986月の裏側
恩田 陸
幻冬舎 2000-03

九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。事件に興味を持った元大学教授・協一郎たちがたどりついた結論とは…。

ホラー小説…なのでしょうが、不思議とあまり怖さは感じませんでした。ホラーでもなんでもない恩田さんの本が怖いことはたくさんあるのに…ホラーが怖くないってどういう感性なんでしょう、私…。

怖さを感じるよりも、なにかこう、すごく考えてしまったのです。ここに書かれていることが、ものすごくわかるような気がして。自分ひとりが「ホンモノ」で、それ以外の人はみんな作り物かもしれない。私の目の届かなくなったとたんに、みんな止まっているのかもしれない。見えない場所は、真っ暗な闇が広がっているのかもしれない…。そんなこと、考えたことってないですか?
| あ行(恩田陸) | comments(6) | trackbacks(3) |
ロミオとロミオは永遠に [恩田陸]
4152084375ロミオとロミオは永遠に
恩田 陸
早川書房 2002-11

日本人だけが地球に居残る近未来。エリートへの近道は「大東京学園」の卒業総代になること。苛酷な受験レースを潜り抜けたアキラとシゲルを待ち受けていたキャンパスとは…。絶望に満ちた学園からの、郷愁と哄笑の大脱走劇。

恩田さんの本を読んで、こんなに何度も声を出して笑ったのは初めてかもしれません…。おもしろおかしい物語なわけではありません。うきうき気分なんて全然なくて、むしろ、シリアスで重い、いろいろ考えさせられてしまう物語です。そんな物語の中だからさらに光るのでしょうか、散りばめられた「小ネタ」に吹き出すこと幾度。辛辣で、ブラックで…おもしろすぎます!

この物語の登場人物にとっては、私たちのいる現在は「過去」です。私たちの「今」を通り抜けた後の世界の彼らが、この「今」をどう見ているのか、考えているのか。現代を鋭く風刺―なんて言葉じゃ足りない、これが恩田さんが二十世紀という時代に捧げたオマージュかと、きっちり心に刻みました。
| あ行(恩田陸) | comments(9) | trackbacks(7) |
エンド・ゲーム 常野物語 [恩田陸]
4087747913エンド・ゲーム
恩田 陸
集英社 2005-12

正体不明の存在「あれ」と戦い続けてきた一家。父が「裏返え」され失踪してから、母・瑛子と二人暮しを続けてきた拝島時子。ついに母も倒れ、一人ぼっちになってしまった時子の前に現れた人々は―。

『光の帝国―常野物語』に収録されていた「オセロ・ゲーム」の続編にあたる作品です。

誰が敵なのか、味方なのか。そもそも敵とか味方とかいう問題なのか。いったい何に巻き込まれているのか。自分が何なのか、何をすべきなのか。何も分からない主人公の不安が、まるで自分のことのように感じられて、読んでいる間、実際気分がわるくなりそうでした。(いや、悪い意味でなく!)だって読んでいる自分にも真相がわからないのです。主人公といっしょに翻弄されるしかないじゃないですか…。

もちろんこれは小説なので文章のみで構成されていて、絵はありません。ですが、読んでいるだけで目の前にありありと映像が浮かぶようなのです。それが怖い。とにかく怖い。すごいです。読んでいる間、今読んでいるこのページから顔を上げたら、こんな世界がひろがってたらどうしようと考えて、それだけで心臓がどきどきして、冷や汗が出てきて、怖くて顔をあげられませんでした。そしてそのままラストまで一気にひっぱられました。このラストも…私には怖いです。えーん…。

途中でやめるなんていうことはできません。私はこの本を偶然本屋で見かけ、「あ!もう出たんだ〜。」と軽い気持ちで手にとってパラパラと…めくったが最後、本を置くことができず、そのまま立ち読みで最後まで読み通してしまいました。(恩田さん、および青山ブックセンターの方、ごめんなさい…。手持ちがなかったのでその日は買えませんでしたが、後日絶対買います。)

とりあえず、しばらくボーリングには行きたくないです…。怖い!
| あ行(恩田陸) | comments(13) | trackbacks(12) |
MAZE(めいず) [恩田陸]
4575234079MAZE(めいず)
恩田 陸
双葉社 2001-02

アジアの西の果て、白い荒野に立つ矩形の建物。足を踏み入れた人が何人も消えているという、「存在しない場所」「有り得ぬ場所」と呼ばれる遺跡。友人である神原恵弥にその場所につれてこられ、その「人間消失」の謎を解くように依頼された時枝満は…。

途中で恐ろしさのあまり本気で「ぎゃぁ!」と叫びそうになりました。鳥肌が立ちました。今思い出しても怖い…。よ、夜に読まなきゃよかった(涙)。

なにしろ恩田さんの作品ですから、これはもうナニが起きても不思議じゃない。どんな怖い結果でも、意味不明なラストでも受けて立つわ…!と気合を入れて読んだのですが、思いのほかちゃんと現実的なラストが待っていたので逆におどろきました(?)。

ところでこの話に出てくる「神原恵弥」って…あれ、『クレオパトラの夢』に出てきた恵弥さん?おぉ〜、私この人大好きなので、また会えてうれしいです。っていうか、ほんとは『MAZE』が先か…。「シリーズ化してほしい」とか書いてましたが、そもそも二作目だったってことですね、お恥ずかしい…。じゃぁ三作目も希望ってことで…(出てたらどうしよう)。
| あ行(恩田陸) | comments(6) | trackbacks(4) |
黄昏の百合の骨 [恩田陸]
4062123320黄昏の百合の骨
恩田 陸
講談社 2004-03

「自分が死んでも、水野理瀬が半年以上ここに住まない限り、家は処分してはならない」という亡き祖母の遺言に従って、子どもの頃に住んでいた「白百合荘」に戻ってきた理瀬。叔母である梨南子、梨耶子と共にその家で暮らし始めた彼女の身に降りかかる出来事は…。

再読です。やっと正しい順番でここにたどり着きました。

以前に、「三月シリーズ」を全く一作も読んでいなかった状態で読んだときでも、この物語はこれ単体ですごくおもしろかったことを覚えています。今回、改めて読んでみても、そのおもしろさはやっぱり健在でした。でも今、シリーズを順番に読んできた状態でこれにたどり着くと、また全然違った物語になっているというか、+αで楽しめるというか、自分の感じ方のあまりの違いにおどろきました。

今回の理瀬はあの『麦の海に沈む果実』の学園を去った後、留学していたイギリスから日本に帰ってきたところという設定です。最初から理瀬のキャラクターがつかめているので、物語にもすっと入り込め、ここに漂うものすごい緊張感、それぞれの思惑と疑心暗鬼が交錯するピリピリした雰囲気に思いっきり浸ることができました。

そして、以前読んだときには気づけなかった、理瀬とヨハン、理瀬と稔、理瀬と亘、理瀬と雅雪、それぞれの物語、それぞれの間の微妙な感情や関係というものに、すごくどきどきさせられました。よく読んだら理瀬、すごいかも…。いや、ほんとすごい。赤面しちゃいました。お、大人だわ…。

でも理瀬はまだ十六歳で、自分でもそのことは十分分かっていて、それでもまだ一人では生きていけなくて、その「大人と少女のはざま」のもやもやとした感情というか、精神と体のアンバランスさというか、そういうのがすごくリアルでした。どきどきさせられました。

そして全ての事件が解決したと思いきや…このラスト。以前読んだときのことをすっかり忘れていた私は、やっぱり驚かされました。電車で読んでいて、あと数ページというところで降りる駅に着いてしまったのですが、そこでやめられなくて、駅のホームでページをめくりました。二度楽しめてすごくお得でした!「理瀬シリーズ」この先がどう続いていくのか、ほんとうに楽しみです。

ちなみに以下は以前に読んだとき(2004年12月5日)の感想。
ここに戻ってくるまでほとんど一年かかってるじゃないですか。バカ…。
でもこれだけ楽しめたなら、順番間違って読んだのもよかったのかもしれません!二度目を読んでいるという苦痛は全くありませんでしたから!

----------------------------------------------------------------------------------

一気に読んでしまいました。先が気になって気になって…。

おもしろかったです!
とても怖い話ですけど。最後まで気を抜けません。

だた、最後まで読んでも「あれ?あの件は?何のことだったのかな?」と思うことがあったのですが、それはこの本がまた違う本の続編になっているからだということを、他のレビューを読んで知りました。しまった。そっちも読まねばです…。
| あ行(恩田陸) | comments(10) | trackbacks(11) |
麦の海に沈む果実 [恩田陸]
4062101696麦の海に沈む果実
恩田 陸
講談社 2000-07

「三月以外に入ってくる者があれば、そいつがこの学校を破滅に導くだろう」そんな言い伝えのある全寮制の学園に、二月の終わりの日に転入してきた少女・水野理瀬。何も知らない彼女を迎えたのは不思議な学校と、様々な秘密を抱える生徒たち。そして次々に起こる奇怪な事件。理瀬の隠された秘密とは…。

再読です。やっと正しい順番でたどり着きました。
刊行順で言うと、
 三月は深き紅の淵を
麦の海に沈む果実
黒と茶の幻想
黄昏の百合の骨
となるのですが、これは、→□い任皀痢璽廛蹈屮譽爐任后
私の場合はあ□、なので、かなりプロブレムでした。

この『麦の海に沈む果実』は、『三月は深き紅の淵を』の第四章で断片的に語られた物語の完全版であると言えます。『三月』の中では、それぞれのエピソードが突然、しかもちらっちらっと出てくるだけで、ものすごく思わせぶりだったのですが、これですっきりしました。

もちろんこの『麦の海』の中にも、「三月は深き紅の淵を」という本が重要な小道具として登場しています。でもその「三月」は、今まで読んできたあの『三月』とかあの「三月」とかとはまた違った「三月」です。正体不明、変幻自在、それこそが「三月は深き紅の淵を」。おもしろすぎます。すごすぎます…。

三月シリーズとしてのつながりはそれだけではありません。理瀬のルームメイトとして登場する「憂理」は、『黒と茶の幻想』で重要な役割を果たした「梶原憂理」と同じ名前を持っています。果たして二人は同一人物なのでしょうか?この学園では彼女たちの名字は隠されている(そういうしきたりになっているのです)ので、ばっちり同じとは言えないのかもしれません。境遇とか生い立ちも似通っていますが、恩田さんは「同じ名前であっても同一人物とは限らない」みたいな素敵にいじわるなことを言ってらっしゃったので(笑)、違うのかもしれません。そういうことを考えながら読むのも、また楽しいものです。

そしてこの『麦の海』は、理瀬の小学校時代を描いた短編「睡蓮」(短編集『図書室の海』収録)や、ヨハンが主人公の後日談である短編「水晶の夜、翡翠の朝」(アンソロジー『青に捧げる悪夢』他収録)、そして『黄昏の百合の骨』へとつながっていきます。それを考えるとこれはもはや「三月シリーズ」から一歩抜け出した「理瀬シリーズ」と言ってもいいのではないでしょうか。この広がり方が…ほんとうにすごいと思います。どこまでいくのか、ほんとうに楽しみです。

それにしても二度目なのにこんなに面白いなんて。ハラハラするなんて。一度目に読んだときも、この本のラストは印象的だったのでさすがに覚えていたのですが、それでも面白かったです。

以下は以前に読んだとき(2005年3月10日)の感想です。 
そう、すでにこの時点で先に『黄昏』を読み、次に『麦の海』を読むという間違いをおかしています。『黄昏』でおかしいと思ったときに、なぜちゃんと調べずにいきなり『麦の海』を読むのか!自分!おかげでつまりシリーズをほとんど全部逆から読んでしまいましたよ。とほほ。

----------------------------------------------------------------------------------

先に『黄昏の百合の骨』を読んでしまっていたのですが、やっと読みました。

読んでいて『黄昏…』の時の理瀬のイメージと何か違う…と思っていたのですが、最後まで読んだらその違和感の理由がわかりました。なるほど。

物語の中では、様々な事件が起こります。殺人事件なのか事故なのか…。でも、この物語でおもしろいのは、そういった「事件の謎解き」のミステリー的なおもしろさではなく、なんというか、もっと「物語全体」です。事件は確かに起きているのに、それだけではない、もっと違う何かが起こっていて、それが何かがわからない…。そういう焦りというか不安感というか、読んでいてどきどきして、先が読みたくなって、一気に読み終わりました。

十四歳の少女である理瀬の周囲の環境や、彼女が抱える悩み、みたいのもとてもリアルで、「このくらいのときってこういうことあったな、こういうこと考えていたな」というのを懐かしく思い出したりしました。(本筋からずれてます。)

さて、もう一度『黄昏の百合の骨』を読まないと…。(←ほとんど内容覚えていない。)そしてそれ以外にもこのシリーズ、いろいろ関連本があるみたいなので調べて読まないと…。恩田さんの作品は、登場人物がいきなり違う作品にちょろっと出てきたりするので、いちいち気になってしまうというか、それがまたいいというか、とにかく気になるのです。
| あ行(恩田陸) | comments(24) | trackbacks(11) |
黒と茶の幻想 [恩田陸]
4062110970黒と茶の幻想
恩田 陸
講談社 2001-12

学生時代の同級生だった利枝子、彰彦、蒔生、節子。友人の送別会をきっかけに集まった四人は、卒業から十数年を経て、Y島への旅を企画しますが…。

三月は深き紅の淵を』の第一章「待っている人々」の中で語られた「三月は暗き紅の淵を」(ややこしい!)の第一部、「黒と茶の幻想」そのものの物語です。
(このややこし過ぎる三月シリーズについてのすばらしい相関図。)
そう、その中で語られた「黒と茶の幻想」とは、このような物語でした。

四人の老人の―老人というには気の毒かな、四人の壮年の男女が旅をする話でね。ほんと、これだけなんですよ。場所は、恐らく屋久島だと思うんだけど、はっきり言及はされてません。ちんたら、だらだら旅をする。彼らの人間関係はよく分からないんだけど、とにかくこの連中がよく喋る。それも変な事件の話ばっかり。四人のそれぞれが安楽椅子探偵の役割を果たすわけですね。でもすぱっと真相が明かされるものもあれば、侃々諤々勝手なことを論じてそれで終わってしまうものもあるし、話を匂わせただけでそのまま通り過ぎちゃう事件もある。そのあたりが全くゆきあたりばったりというか、もしくは恐ろしく計算されているのかは分からないけれど、それぞれの断片が実に魅力的でね。
もう、まさにこれそのもの!こんな体験したの初めてです。

そしてこの物語自体が、なんというか、壮絶すぎて、ちょっと感想を書こうにもどこから手をつけていいのかわかりません。

第一章・利枝子、第二章・彰彦、第三章・蒔生、そして第四章・節子。それぞれの章をそれぞれの人物の視点で書きながら、しかし時間軸は交錯せずに、旅の流れをそのまま追っていくという仕掛けになっています。つまり全体としては三泊四日の小旅行の物語なのですが、たったそれだけの期間の出来事に、これだけ四人それぞれの心の奥底までを掘り下げ、愛も憎しみも、過去も未来も、全て、濃密に映し出して描かれた物語っていうのは、そうそうないんじゃないかと思います。

この四人の語り順もみごとだったと思います。私は読んでいて絶対「蒔生」が最後なんだろうと思っていました。だから三章で出てきちゃったときにはびっくりして。「節子」でラストってどうするのかなぁと思っていたのですが、読み終えてみれば「節子」意外にラストはありえない!という。すばらしい構成でした。

人知を超えた太古の森を舞台に繰り広げられる、人と人の関係の物語。これを読んだら自分の人生なんて1mmくらいの薄っぺらいものに思えてきました…。読んで何かを考えるというよりは、読むだけで何かを感じさせるというか、もう、それをただ感じるだけでせいいっぱいというか。圧倒的でした。はぁ〜…。

そして今『麦の海に沈む果実』を再読したくてたまりません…。
| あ行(恩田陸) | comments(9) | trackbacks(12) |
三月は深き紅の淵を [恩田陸]
4062648806三月は深き紅の淵を
恩田 陸
講談社 2001-07

本の扉を開けるとその一枚目にあるのはロアルド・ダール『チョコレート工場の秘密』に出てくるウィリー・ワンカからのメッセージ。もうこの時点でなにか心をぐいっとつかまれたような気がしました。そこからどんどん引き込まれました。うわー…。すごい本です。何で今まで読んでなかったんだろう!よりによってこれを!自分のばかばか!という本でした。

以下、自分の中で整理をつけるため、ネタばれありありで書くので、未読の方は飛ばしてください…。

この『三月は深き紅の淵を』は、四つの章から成り立っています。

第一章「待っている人々」
第二章「出雲夜想曲」
第三章「虹と雲と鳥と」
第四章「回転木馬」

第一章は、謎めいた本「三月は深き紅の淵を」をめぐる四人の老人たちと、その屋敷に招待された青年の物語です。この章で説明される「三月」という本の内容は、以下のようなものです。

第一部「黒と茶の幻想 ―風の話」
 四人の壮年の男女が旅をする話。
 四人がそれぞれ安楽椅子探偵の役割をしながら謎を解明していく。
第二部「冬の湖 ―夜の話」
 失踪した恋人を、主人公の女性が恋人の親友と探す話。
 キャンピングカーに乗ってひたすら北へ北へと走る。
第三部「アイネ・クライネ・ナハトムジーク ―血の話」
 海辺の避暑地に家族とやってきた少女が、
 生き別れになった腹違いの兄を探す物語。
第四部「鳩笛 ―時の話」
 ある物語作家が小説を書いている話。

こう説明された「三月」という本は、この第一章の終わりでは「存在しない」ということになっています。

そして第二章は、「三月」の作者を突き止めるために、夜行列車に乗って出雲へ向かう二人の女性編集者の物語です。この章では「三月」は存在していますし、謎であったその作者も、なぜこの物語が書かれたのかも、明言はしていませんが、それに近いことが語られます。

第三章は、二人の少女の死で幕を開けます。腹違いの姉妹だった二人の死の謎を追う友人たち。そしてこの章では、死んだ少女が書きたかった本を、残されたものが受け継いで書こうとする―つまり「三月」はこれから書かれることになっています。

最後の第四章は、ある物語作家が「三月は深き紅の淵を」という小説を書いている物語です。そう、最初の第一章の中で説明された「第四部」とこの「第四章」はまさに同じ。そしてこの第四章の中で、作家はこのように語っています。

第一章「待っている人々」では『三月は深き紅の淵を』という小説は存在しないことになっており、第二章「出雲夜想曲」では実際に存在していることになっており、第三章「虹と雲と鳥と」ではこれから書かれようとしているところの話、第四章「回転木馬」ではこの小説を作者が今まさに書こうとしているところ、というものだった。
そう、私が今手にしている本、この『三月は深き紅の淵を』という本は、作者がこの章で述べているまさにその通りの本なわけです。えぇ?それってどういうこと?さらに、第四章以外のそれぞれの章も、第一章で語られたそれぞれの部の話と微妙にかぶっているではないですか…。こういう構造をなんというのでしょう?入れ子…とは違いますし。とにかく読んでいてすごい!と思いました。

この第四章で小説を書こうとしている作家というのが、どう読んでも恩田さんご自身にしか思えず、エッセイを読んでいるような気持ちになってしまって、え、でもこれは四つ章のうちの一つで、内側の話で、外側じゃなくって、でも外側みたいで…ともう頭の中は?マークだらけです。外側も内側も、境界があいまいになって、その中に飲み込まれていく感じ。ぞくっとするというか…。すごく翻弄されました。うまく説明できませんが、読んでみるとこの不安な感じというか、自分が今どこにいるのかわからなくなっちゃう感じが、すごく体験できると思います。

さらにこの第四章、ラストでもう一度こういう文章が出てきます。「今、私はある四部作の小説を書き始めようとしている。その四部作のタイトルはこうだ。「三月は深き紅の淵を」。」あれ?もう一度??そして作者が名づけた第一部のタイトルは「黒と茶の幻想」―。あぁ!!!もうナニがなんだか!無限のループにはまりこんでしまったようです。

そして私はどうするのか。これから『黒と茶の幻想』を読むのです!

【追記】
つまりこの『三月は深き紅の淵を』は、一つの物語であると同時に様々な小説の予告編になっていて、いくらでも増殖することが可能になっています。実際に書かれているのが三月シリーズと呼ばれる『麦の海に沈む果実』だったり『黒と茶の幻想』だったり、(さらに…実はこっそり『禁じられた楽園』もこの本とちょびっと(ほんとにちょびっと)関係が…!あるではないですか!)。先に読んでしまっているものがあるのがすごく悔しい…ので再読してみたいと思います。(心から!)

参考サイト:TACETさんのサイトの、三月シリーズ相関図 
       ありがとうございます。
| あ行(恩田陸) | comments(25) | trackbacks(16) |
球形の季節 [恩田陸]
4101234124球形の季節
恩田 陸
新潮社 1999-01

四つの高校が居並ぶ町、谷津。あるとき高校生の間に奇妙な噂が広がります。「地歴研」のメンバーはその噂の出所を追跡調査しようとしますが、やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消すという事件が起きてしまい…。

ちょっと原点に戻ってみよう、というわけで、『六番目の小夜子』に続く、恩田さんのデビュー二作目の作品です。

現実の世界と、そのすぐ背中合わせにあるこういう「世界」。日常と、非日常。その境界はほんとうに曖昧で、今こうしている私のすぐそばにも、それはあるのかもしれない。そんなことを感じさせられました。この物語の主人公である高校生たちの、もう子どもではない、でも大人でもない、そういう不安定さと、この物語の世界がものすごく絶妙にマッチしていたと思います。

そしてその高校生たちの普段の生活や考えていることが、すごくリアルに描かれていて身近に感じられるだけに、それと隣り合わせに存在する非日常までがまるで現実のように迫ってきて、ぞくぞくさせられました。作中に登場する「金平糖」とか「石」とか「ブランコ」とか…。そういう何気ないもの、なんでもないものもすごくすごく、ぞっとするほど怖かったです。やっぱりはじめっからこういうのすごく上手な方だったんだなぁ…としみじみ思いました。

そして何も解決したわけではない、何も終わったわけではない、むしろこれからが全ての始まりのような、このラスト。みのりに始まって、みのりに終わるというこの構成にもぞくっとさせられました。ページは終わったのに、まだ自分はあっちの世界から帰って来られずにいるような、飛んでしまったままのような、漠然とした不安感。そんな余韻を残す読後感もあわせて、この世界を堪能したなぁと思います。
| あ行(恩田陸) | comments(4) | trackbacks(7) |
小説以外 [恩田陸]
4103971061小説以外
恩田 陸
新潮社 2005-04-27

まさにタイトルの通り、「小説以外」の恩田さんの書かれたもの(エッセイとかあとがきとか)を集めた本です。

今までどんなものを恩田さんが読んできたのか、どんな本が好きなのか、どうして本を書いているのか…そんなことがすごくよくわかる本になっていました。それにしても、私は「恩田さんの好きな本」をほとんど読んでないなぁ、名前も知らないなぁ、と。ちょっぴり残念…。まぁ年代が違うというのもありますけど。

でも、私の知らない本を読んで本が好きになって本を書いている恩田さん。そして、その恩田さんの本を読んでいる本が好きな私。なんだか不思議な感じがしました!

読みたい本もたくさん増えちゃいました…うれしい悲鳴!
| あ行(恩田陸) | comments(3) | trackbacks(4) |